観察報告 №9
眼前を 私 が横切ったときに
予感すべきだったのか
途切れた記憶を巻き戻して
直下に窪んだ壁
一人ぼっちの電灯が瞬く
真っ青な蟻が腕を這う
アスファルトに広がる罅(ひび)
日々狭まる視界
あなたはまだそこに居続けるの
崩れて、崩れていく 足元
何かが変わる期待は
とうに泡を上げて溶けた
もうここにはいられない
(I can't be any longer here. )
試験管の中 螺旋を昇って
光沢のない段差は延々と続く
澄んだ馬の眼球
映り込んだ景色は粉々に散って
欠けた破片が膝に刺さる
溶けて、溶けていく 日常
重力を無視するには
投げ捨てしまった無邪気さが惜しい
あなたには見えるだろうか
(Could you see it?)
日に焼けた幾枚の写真を
バラバラに引き裂いて黄昏の紅に落とす
燃え尽きることのない欠片を
(わたしの)手のひらから
(あなたの)指の先から
舞い上がる紙吹雪を
私 は見つめる
歪んで、歪んでいく あなた
燃えて、燃えていく わたし
取り残されたのは 耳鳴りだけ
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