蟻が運ぶ蝶の帆船の 葬列を見て思い出す
夏の匂い草いきれと 降るような蝉しぐれ
夜店の金魚のおまけの一匹
今は空の金魚鉢だけが
窓辺に置いてある
落ちてゆくほうき星 戻らない夏の日々
割れた風鈴の音を 僕はもう覚えていない
眠りは死の演習なのだと
誰かが言っていた
それなら向こう岸の
夢も見られるかもね
おいでよと呼ぶ声は
水のそこに沈んで消えた
夜店の金魚の最後の一匹
捕らえて映写機の中の君が笑う
きえてゆくあかね雲
なきやんだヒグラシとともに
幽かに揺れる送り火が 彼方へ去ってゆく
夏が終わる頃には
あの日の君を残して
僕もいなくなるから
サヨナラ 今だけは 言わないでおかせてよ
落ちた線香花火の音が ジワリと地面に染み込んだ
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想