朝食前の早い時間、まどろみの中、携帯で起こされて呼び出された。指定された部屋に行くと香玖夜さんが待っていた。この前とは違って、数人の恐そうなスーツ姿の人も居る。

「ごめんなさいね、浬音ちゃん。朝から呼び出したりして。」
「いえ…。」
「…では、私は失礼します。」
「待ちなさい、鳴兎。」
「はっ…!」
「彼女の事で密を呼ぶつもりだったけど、貴方も残りなさい。理由は判るわね?私を
 甘く見ない様に。」
「は…はい!」

笑顔だけど何か迫力と言うか、貫禄と言うか…でも何だろう…私の事?それに鳴兎もって…?

「あ、あの…!私の事って…それに鳴兎や密さんもって…。」
「朝吹琉一、妻の朝吹小百合、及び朝吹琉人に会って貰います。彼等の返答次第で
 私達は3名を摘発するわ。」

胸がズシンと重く痛んだ。そんな事になればお父様もお母様もお兄ちゃんも、きっと私を益々憎むんだろうな…。前にも増して会いに行くのが怖いと思った。全身が小さく震えて体がきゅっと竦んだ。俯いた私を覗き込む様に香玖夜さんが話し掛けて来る。

「大丈夫よ、一人で行けなんて言わないわ。何かあったら大変だし。」
「え…?」
「鳴兎、貴方も同行しなさい。彼女を必ず守る事、良いわね?」
「はい。」
「ん~、それにしても意外ねぇ、私てっきり密を選ぶと思ってたんだけど。」
「ふぇっ?!」
「香玖夜様っ!」
「俺もそのつもりだったんですけどね。」
「ひゃわぁあああああああああああああああっ?!」
「…っ!!」
「…そう警戒するな、今日は飲んでない。」
「あら、密。珍しいわね、普段飲まないのに。」

飲んでないかじゃなくて気配も無く真後ろに現れた事にびっくりしたんですけど…。心臓が止まるかと思った。と言うか酔ってただけでは済まされない気が!鳴兎は明らかに睨んでるし、香玖夜さんは何か色々お見通しっぽいし…うぅ、皆恐い…。と、密さんは私に封筒を差し出した。

「浬音がこんな事を望んでないのは判ってる。どれだけ酷い目に遭わされたとしても
 あの三人を家族だと思っていたい気持ちは尊重したい。だけど…傷付くと判ってて
 見過ごす訳にも行かない。」
「…はい…。」
「大丈夫よ、浬音ちゃん。貴女の事はちゃんと考えてるから。『ひとりぼっちじゃ
 可哀想だ』って鳴兎が必死で頼んで来たしね。」
「え…鳴兎…?」
「香玖夜様!!」

あれ?だって…私を引き取る話は密さんが頼んだって…あれ?隣を見ると鳴兎はあからさまに目を逸らした。

「うふふふ…結構前から愛されてるわよ~?浬音ちゃんは。」
「あ…愛…?!」
「ちょ…あの…!し…失礼します!」
「朝礼遅れんなよ~?バカウサギ。」
「黙ってて下さい!…痛っ!…わぁっ?!…ゴフッ…!!」

ピンボールみたいにあちこちぶつかりながら鳴兎はあたふたと外に出て行った。香玖夜さんは密さんは勿論恐そうなスーツの人すら吹き出しそうなのを必死で堪えていた。

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  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-107.縷紅草-

香玖夜は無敵

閲覧数:161

投稿日:2010/09/07 18:39:40

文字数:1,223文字

カテゴリ:小説

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  • 遊羅@右肩逝きかけ

    遊羅@右肩逝きかけ

    ご意見・ご感想

    香玖夜さんが無敵なんじゃない。
    嫁は(ほぼ)皆無敵だr(黙れ

    2010/09/07 19:35:17

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