2XXX年日本。とある都市遣水町。別名妖町。自然が豊かな上に工業も盛んで明るいこの町になぜそんな物騒な別名があるのか。理由は単純明快でこの世に妖怪の類がいるから。「妖怪なんてこの世にいない!」なんてことを口にする輩が世界にはたくさんいるがそれは本人達が知らないだけで実はそこもかしこも妖怪だらけ。人に紛れてひっそりと暮らしている。そしてこの町はただ単に暮らしてる妖怪が多いから妖怪達から妖町と呼ばれてるだけでほとんどの人間は妖町なんて知る由もない。そんな町の片隅の住宅街にある二階建ての一軒家。両親が世界各国を飛び回っているためこんな家に一人暮らしというなんとも寂しい暮らしをしているわけだが、いつもこの季節ならうるさい蝉の声で目が覚めるはずなのに珍しく、そして不気味なほどに蝉の声がほとんどしなかったからかリビングの真ん中の机に置かれた目覚まし時計の音が家全体に響きわたる。それは一階にいると騒音、二階にいても日頃の蝉並にうるさい。その音に叩き起こされ、渋々目覚まし時計を止めるため二階の自室のベッドから出ると一階のリビングへと向かう。一階へ降りリビングに到着し目覚まし時計を止め時間を確認する。時計は午前七時ちょうどを指している。もう最近はこの時間に理由はともあれ起きてしまっている自分がいる。まぁ出勤時間まで余裕がかなり持てるから特に気にはしてないがやっぱり無理矢理起こされ眠気がしてならないのもまた事実。おかげで頭がグルグルかき乱されている。とりあえず眠気を覚ますために顔を洗いに洗面所へ行き顔を洗い寝癖を少し整え改めて鏡をみる。父親譲りの黒々とした髪から母親譲りの白鼠色の角が柔らかな三角の耳がいつもと変わらずピンとたっている。そう俺、杉宮優はただの人間じゃない。狼の血を引く正真正銘の狼人間…だったらまだよかったものの、残念ながら俺は純粋な狼人間というわけではない。母親の高祖父に当たる人が純粋な狼人間だったらしい。けれどその血は代を重ねるごとにどんどん薄まっていき、玄孫に当たる俺には単純計算で一割にも満たないほどしかその血はない、つまりはほぼ人間よりの狼人間、というなんとも中途半端な位置に俺はいることになる。そして一応妖怪だがほぼ人間、という微妙なポジションなのに、耳だけはしっかり受け継いでしまいなるべくそれをばれないように振る舞う、というややこしく面倒くさい事情を抱えているのである。耳は頭に包帯を巻き、さらにニット帽をかぶって働き、買い物をし、という二段構えにより隠し通すのは容易いがもうひとつ受け継いでしまったややこしい事情。それが身体能力である。純粋な狼人間の身体能力は並じゃない。おそらく陸上競技の大会にでようものなら新記録を出しまくりで会場唖然、という結果を生むのは目に見える。その身体能力の高さはたとえ玄孫で血が薄いといっても並じゃない。純粋な狼人間にこそ敵わないものの、一般人にはまず負けない。そのため当然そんな力を抑えながら生活するがあるのだが頭に血が上るとそうもいかなくなる。喧嘩なんてしたら相手が危ないし自分の身分が知れると大変なことになる。その結果かなりのストレスが溜まる。そんな俺は庭の一角にある畑になっているトマトの中で一番手頃で熟してそうなものを三つほど選んで収穫する。これがなかなか楽しくストレス解消法の一つとして重宝している趣味である。もともとトマトが好物な上にそれを育てる立派な庭も畑もある、というのも合間って最近の日課になっていた。この日も美味しそうなトマトが幾つもなっていてその中でも美味しそうなのを収穫し部屋に戻りそのままキッチンへ向かう。一人暮らしの朝ごはん。それはある意味悲しくしかしそれでいて自由で何のストレスもない天国のような時間。のはずなのに、なぜか気付かぬうちに食卓にすでに三人ほど座っている。二人はスーツ姿の男女。一人はバスタオル一枚というこれまた呆れた格好の女性。しかしその三つの顔全てが誰なのか認識するのに時間はかからなかった。
「社長。それにそれに松村に美佐まで朝から人の家に勝手に上がり込んでなにやってんだ。社長に至ってはシャワーまた勝手に使いましたね」
「いいじゃない減るものじゃないんだから」
「まぁまぁ先輩。ここは落ち着いてください」社長、狭川幸恵と後輩であり相棒である松村善弘が腹が立つほどにこやかな顔で言ってくる中、一人黙って座っていた女性、高倉美佐は、
「社長。早めに本題を言っておかないとまたグダグダと文句を言われますよ」と一喝。違うそこじゃない、もっと他に叱るべきことがあるだろ!、と言う前に社長が
「それもそうね。優…あなたタイムトラベルなんでしてみたくない?」と笑顔で問いかける。これがただでさえ普通じゃなかった俺の日常をさらなる非常へと叩き落とす悪夢の始まりだったことをまだ俺たちは知らなかった。欲望と絶望が交差する血の悪夢の。

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  • この作品を改変しないで下さい

FTJ~白桜の銀時計~

定期的に更新できたらなと思ってます

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閲覧数:174

投稿日:2014/01/19 00:54:01

文字数:2,017文字

カテゴリ:小説

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