桜舞い散る坂道
風を受けながらぐんぐん上ってく
真新しい学ランに白いスニーカー
真っ青な自転車に目を奪われた

同じ教室、席はナナメ後ろ
気が付けば貴方の姿ばかり追ってる私

毎日、少しずつ貴方を知ってく

黒猫のような短い髪、日に焼けた肌
背はそんなに高くない、高くも低くもない声
すこし下がった瞳に屈託の無い笑顔

シャーペンの芯は「F」
意外と丁寧な文字
歴史と数学が得意、美術は苦手
実は、甘いものが好き

放課後、部室の窓から見える貴方を
スケッチブックに描きとめて
貴方ばかりのスケッチブックは、もう二冊目
鞄の中にはいつまでも渡せない手紙が一通

このスケッチブックと手紙は私だけの秘密

暑く長い休みの後の教室

振り向けば確認出来るその距離に
舞い上がる気持ち抑えながら

久しぶりに聞く声に、鼓動は全力疾走状態

毎日、一枚、スケッチが増えて
想いも一緒に重ねていく

貴方の姿描きとめるたびに
気持ちばかりが募ってく
見つめるだけしか出来ない私

休みの間に書き直した手紙は鞄の中
スケッチブックは三冊目

今日こそ、明日こそ、明後日こそは
この手紙を手渡そうと思いながら
日々は過ぎてく

いつまでも渡せない手紙とスケッチブックは
まだまだ私だけの秘密

涼しい風が葉を染める頃
大きなキャンバスに貴方の姿描いていく
この絵が完成した時に何度も書き直した手紙を
渡しに行こうと決めた

空が高く澄んだその日は、朝早く目が覚めた
家を出るまでに何度も鏡とにらめっこして
もう一度、書き直した手紙確認して
バクバクしてる心臓と同じ速度で
坂道駆け上がった

茜色に教室が染まる頃
とうとう手紙は貴方の元へ

初雪が降った日
青い自転車にステップがついた

冷たい風切りながら、自転車は坂道下っていく
始めて乗せてもらった自転車の後ろは
その速さが少し怖くてぎゅっとしがみついた

くっついた背中が温かくて
いつもより近い顔の距離に
嬉しかったりドキドキしたりで
寒さと別に顔は耳まで赤くなった

手紙は、もう秘密じゃなくなったけど
重ねた想いの分だけ描いた
あのスケッチブックは私だけの秘密のまま

これからは、心に二人だけの秘密を増やしてく

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

SECRET

閲覧数:69

投稿日:2008/04/26 10:34:35

文字数:989文字

カテゴリ:その他

クリップボードにコピーしました