母からの電話から一ヶ月が過ぎようとしていた。
少女と少女の姉は一生懸命パーティーの用意をしていた。
母と父の帰国パーティを開くために。
大人たちが主催してくれるパーティーと比べれば、
粗末なものだろう。それでも、母と父が喜んでくれると信じ
部屋の飾り付けをするのだ。

そのパーティーが一生開く事はできないと知らずに。

そう、全てはあの日から始まった。少女が、電話で母に帰ってきて欲しいと願った事から始まってしまったのだ。

部屋の飾りつけも大体終わり、後は二人で料理を作るだけ。
「料理ならすぐできるから、一回テレビでも見て休憩しようか、アリス?」
「うん、アリスも疲れっちゃったから休憩したーい!!」
そうして教育番組を見ているとニュース速報が始まった。
二人が、休憩せずにまだ用意をしていたのならば、
他人の手から知らずにすんだのに・・・

『ニュース速報をお知らせします。バルド海で飛行機が沈没しました。
乗客名簿には歌手の夢宮響弥さん、
フルート奏者のフェリシア・ユメミヤさんはじめ
多くの著名人も乗っておりました。』

そのニュースを聞いたとき二人は泣き崩れてしまいました。

「大丈夫よ、アリスっ。生きている人も沢山居るみたいだから、
フェリシア母さまと、父さまは生きてるわよ。
だってアリスの誕生日を祝うんだから。」
「母さしゃまと父しゃま生きてる?アリス残していかない?」
「そうよ。だから一緒に祈りましょう。
無事に二人が帰ってこれるように……」
「あい。」

フェリシア母さま、父さま、
この世で一番二人を愛している私達が心配しています。
どうか、生きててください。
瑞歩母さまのように置いて行かないでくださいください。

死者が増えていく。時間とともに絶望の色が濃くなっていく。
でも、まだ信じていける。アリスの誕生日までは。

それからしばらくはテレビをずっと点けっぱなしだった。
母達の情報が少しでも欲しかったのだ。
悪い情報は気にしないように生きてきた。でも……………。


『バルド海飛行機沈没事件について続報がありました。
あの有名な夢宮夫妻がなくなっていたそうです。
昨夜遺体が発見され、死亡解剖した結果夢宮響弥さん、
フェリシア・ユメミヤさんの情報と見事合致したそうです。
夢宮夫妻は五歳になる娘の誕生祝のために
帰国するという連絡をした後この飛行機に乗ったそうです。』

「姉しゃま、今の…うそだよねぇ。母しゃまと父しゃま死んじゃったの?」
「大丈夫、きっとテレビが間違ってるのよ。
シンディからの連絡を待ちましょう。」
「シンディ?」
「そうよ、シンディ・マーソンさん。
フェリシア母様のマネージャーの桐嶋さんなになら、
連絡行っているのハズだから。もう少し、連絡待ちましょうか」
「うん、アリス待てる!!うそなんか信じないもの。」
母のマネージャーである桐島深琴は
父のマネージャーに母の日本での活動も任せたのだ。
1週間の日本滞在に参加する予定だったが、
事情が変わり参加できなくなってしまったためである。

プルルルルルル プルルルルルルル
「Hello?」
『Nodoca?This is Cindy.』

二人はお決まりの挨拶をし、父と母について話し出した。
シンディの話によると二人は2時間ほど前に、
バルド海で見つかったらしい。
しかしその時にはもう息をしていなかったのだ。
ニュースの情報は正しかったらしい。
諦めたくないのに諦めなきゃいけない状況に追い込まれた二人。
二人とも精神がボロボロになっている。
二人はこれからどうなるのだろうか?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

Innocent Baby 第弐話

長編「Innocent Baby」の第二話です。
いきなりアリスの両親を殺してしまい、すみませんでした。
もうしばらくしたら明るくなるので気長にお待ちください。

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投稿日:2009/08/03 22:09:53

文字数:1,530文字

カテゴリ:小説

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