■長ったらしい前置き■

親愛なる黒スト教徒の皆様こんばんわございます。いつもニコニコあなたの歌詞に這い寄るキジ目キジ科ヤケイ属鶏です。先日友人に「お前の文章回りくどくててうざい。死ね」と言われたので、今回はわりかし簡潔に攻めて行きたいような気がします。
ところで皆さんは漢字テストって好きだったでしょうか。僕は大嫌いです。高校の時なんて選択で現代国語選んだら期末に漢字書き取りオンリーという鬼のようなテストを出されて、あやうく赤点取りそうになりました。まぁ、今となっては良い思い出ですね。
で、漢字っていうのは「読み」と「書き」っていう二つの要素がありますね。「この漢字読めるんだけど書けないんだよなぁ」なんて事は皆さんもよくあったんじゃないでしょうか。まぁ、でも「漢字書き取れるけど読めない」って事は先ず無いと思うのですが、どっちみち文字なんて読めないと先ずお話にならないわけですね。そんなこんなで今回は「歌詞を読む力」のパワーアップを図っちゃおうという粋な企画です。僕は歌詞のアナライズなんていう風にかっこつけて横文字つけてますが、歌詞書きの皆さんも好きな曲の歌詞はどんどん読み解いていってみると新しい発見があったり出会いがあったり幸せな結婚生活が待ち受けてたりするかもしれないので、歌詞書きの地力を増強するためにもどんどん色んな曲にチャレンジしていって欲しいと思ったりする今日この頃です。

んじゃ、僕も即興で歌詞解釈の練習がてら適当に選曲してお手本というわけじゃないですが、アナライズの手順を解説していきたいなぁなんていう風に思います。今回の題材はKONAMIが誇る黄金コンビTOMOSUKEとあさきによる「虚空と光明のディスクール」を解読していきたいと思います。いやぁ、良いですね。黒髪ロングで退廃主義者の文学少女。おっさんの性癖にクロスファイヤーです。内角高めに抉りこむように伸びてくるドストライクです。個人的に戦場ヶ原さん以来の衝撃です。まぁ、俺の性癖の話はどうでも良いんですが。

あさきといえば「この子の七つのお祝いに」だとか「幸せを謳う詩」だとかドス黒いイメージが、がっつりあるんですが、歌詞書きとしては恐ろしいほどのオールラウンダーで、ギタドラやってる人ならわかると思うんですが「凛として咲く花の如く」みたいな和風から「ヘリコプター」みたいなキャンディポップから「お米の美味しい炊き方、そしてお米を食べることによるその効果。」みたいなネタソングに至るまで実に多様な芸風を使いこなし、そしてその全てがハイレベルというチートみたいなスキルの持ち主であったりします。意味がわかりません。

まぁ、あさきの事を語りだすとキリが無いので適当に切り上げましょう。というわけでアナライズ思考実験開始です。最後までお付き合い頂けたり、皆様の作詞ライフに役立てたりできたなら幸いです。では、本番開始致します。


■歌詞の雰囲気やテーマを汲み取る■

ここはもう直感です。楽しい歌なのか、悲しい歌なのか、明るい歌なのか、暗い歌なのか。
ディスクールさんはぱっと聞いた感じ「暗いというほどでは無いけど何処か寂しい雰囲気」ですね。
喩えるなら「廃屋に差した木漏れ日の下で立ち尽くしている文学少女」って感じでしょうか。
いやーーーー良い絵ですね。もう思わず幽霊かなんかと見間違えちゃいそうです!ドキドキ。

では、テーマはなんでしょうか。僕が注目したのはここのフレーズです。

――ああ 光の下で
――背伸びをしてる
――誰にも言えず そう 誰にも

モロにサビの部分ですね。だいたいの曲はメインテーマはサビに設置されています。
皆さんも歌詞を書く時はたぶん一番言いたい事はサビに詰め込むと思いますが、そこはまぁ、よっぽどトリッキーな歌詞で無い限りは普遍的にそういうものです。リスナーが一番聞いてくれるのもサビですしね。何か明確な意図と目的が無い限りは書く時もこの原理に逆らう必要はあんまり無いです。

「光」というのはポジティブな言葉ですね。
では、「背伸び」はどうでしょうか。なんだか無理してる感じがしますよね。

ここから読み取れるものはなんでしょうか。

「光の下」と表現している事から考えると光を何処か遠い存在として捉えていますね。
「背伸び」でそれが決定的になります。この当たりを踏まえると、「光に焦がれながらも、それを受け入れる事に抵抗を感じている、あまつでさえそれは自分には本来似つかわしくないものである」という思春期ドストライクな少女の心境が読み取れますね。

つまりこの歌詞の核は「光」と「背伸びしている少女」という事になります。
「背伸びしている少女」を「虚空」、「光」を「光明」と読み替えればそのままタイトルですね。
ディスクールっていうのは少し難しい単語なのでどう解釈するかは後回しにしましょう。


■2.誰が誰に当てて何を伝えようとしているのかを読み取る■

○人称特定~歌詞にもあるヨ!一人称・三人称~
小説が好きな人だったら一人称・三人称という言葉に聞き覚えがあるかと思いますが、歌詞も文章には違いありませんから物語を何人称で書いているかというのは一つの重要な要素になります。ディスクールさんは「主人公である少女自身が語り部」ですので「一人称」の物語ですね。ここを読み違えると解釈がカオスな事になるので、語り部の姿を想像しながらちゃんと掴んでおきましょう。
物語の主人公とは別の視点で物語を俯瞰している歌詞は三人称で書かれているというわけですね。あ、ここテストに出るのでちゃんとノートにとっておいて下さいネー。

○登場人物の把握
サビから読み取ると「光の下で背伸びをしている少女」と「光」というのがこの物語の核たる登場人物のようです。あさきにしては珍しく「こいのぼりさん」も「ニヤリとした婆さん」も「お人形」も出てきません。世界は平和です。こんなのあさきじゃありません。きれいなあさきと呼びましょう。

○登場人物の比定
これは別に絶対的じゃなくて相対的な関係で良いと思います。例えば主人公Aと登場人物Bは恋人同士であるだとか、片思いの相手であるだとか、友人であるとか、そういうので良いと思います。本来ここは作者にしか見えないところですしね。主人公が恋人に宛てた歌であったり主人公が友人に宛てた歌であったりというところですね。
まぁ、今回はちょっと特殊でして、「虚空と光明のディスクール」はいわゆる劇中劇ですので、具体的な人物名に言及できるわけですが、まぁ、一応例の一つとしてそういう読み方もあるという感じに捉えて頂ければ幸いです。

→語り部たる作者へのアプローチ
さて、ひなびたシリーズに馴染みのある人なら直ぐわかるであろう霜月凛ちゃんがディスクールさんの語り部であり、主人公である事は疑いようも無いところなんですが、「光」は誰を指すのかっていうのがこれまた重要な要素になっていきます。まぁ、ズバリ言っちゃうと「山形まり花」ちゃんなんじゃないかと思うんですが、皆様いかがでしょうか。なんかあの能天気なスイーツっぷりを思い浮かべるとしっくり来るような感じがしますね。少女から少女へのラブソング。うーんエロイですね。


■一旦纏めてみる■

以上の事柄から次の事が読み取れましたね。
・語り部は劇中主人公であり、作者本人である霜月凛ちゃん
・劇中ヒロインであり歌詞を宛てた相手はバンドメンバーであり友人の山形まり花ちゃん
・メッセージは「あなたはとても眩しいけれど、私はあなたに似つかわしくないわ」

うーん。いじらしい。

■3.いよいよ歌詞の解読に取り掛かります■

ここにはいくつかステップがあって、先ずは歌詞っていうのは音楽である事に特化した文字列ですので、そのまま文章として受け入れるにはいささか難儀だったりしますので、先ずは自分の受け入れ易い通常の文章に直し、そこから一つ一つの言葉にアプローチをかけ、最後に結局この歌ってなんなんだろうという事を考えていくのが肝要であります。歌なんて本来「考えるんじゃない!感じるんだ!」という受け入れ方が正しい姿なんですが、アナライズに取り掛かる以上は「考えて考えて考え抜いて、本来の姿を正確に掴みとって感じ取る」というところが肝になってきます。頑張りましょう。

というわけで、歌詞をそのままコピペするのも著作権的なあれの問題もあって憚られますし、僕の分かり易い言葉で歌詞を書いていきましょう。ちなみにこの作業自分で書いた歌詞にやっても案外面白いです。僕もコラボする際は曲の世界観を共有するためによくやってます。まぁ、文字書きの書く文章なんてほとんど暗号みたいなもんですから、皆さんもコラボする際はそういう文章を作ってあげるのも良いんじゃないかな、なんて思います。

ただまぁ、今回は比較的清涼で比較的短いとは言えあさき節全開の歌詞です。リクレクで言えば赤10。ギタドラで言えば紫8.80ぐらいの高難易度譜面ですし、和テイストによくある言葉が何処にかかっているのか曖昧な所なんかはまさにあさきの真骨頂といっても良い感じで、しかも不変的な言語表現なのでそれこそいかようにも解釈できてしまうので、解読にもかなりの想像力が要されます。間違ってても責任は取れませんのであしからず。

というわけで、ざっくり超意訳(超適当な意訳)です。

虚空と光明のディスクール ~超意訳ver~

白い波を掻き分けて見る
空は足早に碧の道に沿うようにして
そこに置き去りになっているかのように輝いている

指でそっとなぞってみる
街の明かりに恐る恐る寄り添う影の
伸びていく姿がきっと私自身なのだろう

ああそうか
光の下で背伸びをしている
誰にもそれを言う事はできないけれど
誰にもそれは言える事なのかもしれない

ああ うつむきがちに
貴方の隣に並んで響かせる音は
私にはとても遠く感じる

まるでコインの裏表のように
此処にある日々は曖昧に意味を変えていく

いつもいつも
掻き分けた白い雲間から私に呼びかけている


それは近づくには余りにもにも遅くて
通り過ぎていくには余りにも速い時間のようで
いつか大きな光に飲み込まれて
花火のように大きな花を咲かせて
音も無く消えていってしまうそんな一瞬

「ああ 今更言う事なんでできやしない」

それは誰にとってもそうであるのかもしれない
あの太陽の日暈の中に隠れてさ

少しだけ躊躇いながら
貴方と紡いでいく音が 反響していく 

貴方との距離はなんて遠いんだろう

貴方は飽きもせずに私に手を差し伸べてくれるというのに
私はいつもそんな事を考えている



check1 碧の道
碧という漢字は「あお」と読みますが「みどり」という読みもあります。
青と緑という色は少なくとも日本においては同様に扱われる事が多いですね。
青信号は緑色ですし、草が青々と茂っているなんていう風にも言います。
わざわざ「碧」と表記したのは凛の中二病な性質もあるでしょうし、なんらかの意味もあるでしょう。
作詞者繋がりで、あさき作詞の「この子の七つのお祝いに」にこんなフレーズがあります。

――浅黄に染まった男と女は利休鼠の眼球こすって痙攣

うーん。ワンフレーズ抜き出しただけなのにやたらおどろおどろしいですね。
利休鼠というのは和名の色の名前で灰色がかった緑色の名前を指します。
じゃあ、緑色の眼球ってなんだよっていうとグリーンアイドモンスターになるのです。
これは東方やってた人なら知ってるかもしれませんが、シェイクスピアの戯曲「オセロ」の一節から英語圏では「嫉妬」を象徴する言葉として知られています。

これを踏まえて考えると「碧」という言葉の中には、グリーンアイドモンスターとまではいかなくても薄っすらとした嫉妬、ここまで薄いと羨望といってもいいかもしれません。そういった意味合いも少なからず含まれているように思います。

つまり「碧の道」という一言には「空の青」と共に「緑(嫉妬・羨望)の視線」という意味合いも同時にカバーしていると考える事ができるわけですね。これによって憧れの空の光と、それを微かな嫉妬と共に見つめる少女の姿という一つの絵に集約させる事ができるわけです。

check2 かえす日々
これはいかようにも解釈できるのがまた難儀なところです。帰す日々、還す日々、返す日々、反す日々、孵す日々。どの字を当てるかによって解釈が変わってきますし、色々な意味を複合的に取り入れているのかもしれません。個人的な思いつきで「裏返す」という意味を解釈に当てはめてみましたが、当然これが正解であるとは限りません。このあたりの作者しか知りえない不可侵なミステリー部分をあれこれと考えて思いを馳せたり、知恵熱を出したり、あらぬ方向に解釈を曲げていくのも、私的考察の限界であり醍醐味であったりしますね。


check3 光の傘
これは日暈を暗示する言葉ですね。太陽の周りにぼんやりと浮かぶ円。
日暈を形作るのは雲。雲を形成する氷晶がプリズムの役割を果たして光の輪になるわけです。
思えば「雲」というのはこの曲の中で一つのキーフレーズになっています。
自分自身を包み込む雲、雲を掻き分けて見る光への憧れ、自身を包む雲もまた光を反射して光を放つ。
なんともロマンチックな絵が浮かんできますね。

後編に続きます

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実践歌詞考察講座 虚空と光明のディスクール 前編

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投稿日:2013/09/29 14:21:27

文字数:5,508文字

カテゴリ:その他

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