今までの人生が正しくなかったんだ。
楽しいなんて関係ない。今の僕の人生が正しいんだよ。
「…ねぇ」
「どうしたの?」
それは、いつもの日常を歩んでいる時だった。
「別れよう?」
その時から、何かが順番に崩れていったんだ。
「え…。な、何で?僕に何かいけないことがあったなら…」
「そうじゃなくって…」
「じゃ、じゃあ、何がだめなの…?」
「……私のこと、好きじゃ、ないでしょ?」
「………え?」
「見てわかるもの。…さよなら!」
ずっと好きだ、と手を取り合っていた笑顔とその手のぬくもりは、すでになくなっていて。目の前にある、暗い現実だけが残された。
昔から、そうだった。
「すげぇ、お前、また100点じゃん!」
「いや、普通だよ。あはは…」
僕は、他の人よりも頭が良くて、皆に慕われる存在だった。すぐ隣に、僕を慕ってくれる大好きな子もいる。すべてが楽しい。これこそ、薔薇色の人生だったのだ。
あの子の存在、皆の声から、僕は望まれて生まれてきた存在だと思えた。
なのに。
いつしか隣にあの子はいなくて。皆も、誰も誰もいなくて。
見ると、皆は僕のずっとずっと前を歩いてた。
僕は、いつのまにか独りぼっちになっていたんだ。
「……きれいだなぁ。それに比べて、僕は、なんて汚くて醜いんだろう」
ふと、僕の瞳が涙で滲んであまり見えない星空をうつしだす。
見えにくくても美しいとわかる星空は、僕の醜さをうつしだす鏡の様だった。
「……僕も、星になりたい」
その言葉は、醜い自分への皮肉だったのかもしれない。自分でも、そうわかっていたのに。
だが、何故か、本当にそうなれそうな気がした。
どこからかナイフを取り出し、それを手首にあてる。
少しひやっとしたが、それは、ナイフの冷たさだろうと思いこんだ。
「ばいばい。僕も、地球(ほし)になれるんだね」
そう言い残すと、一気にナイフをたてる。
その瞬間、僕の体が真っ赤に彩られる。
知らなかった。
僕は、こんなに真っ黒だったなんて。
でも、もう僕じゃない。
さよなら
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想