(起きないなぁ~)
食事の準備を終えた凪は未だ停止している緑版カイトを覗き込んでいた。
悠のアパートはバスで5つくらい進んだ場所なので帰ってくるにはまだ時間がかかりそうだ。
(これが機械なのかぁ~)
相手が動かないことをいいことに凪はほっぺた等をつねったりして遊んでいる。

するとカイトは目を覚ました。

「………っ!!」(カイトが目の前にいる凪に驚く音)
「………………」(凪が自分のしたことに気付いて赤面する音)

ヤバい。
「えっと、その…」
目と鼻の先にある男性に対する言い訳を模索する凪。
(引くよね~…)
そう思いながら男性を恐る恐る見ると彼は涙目だった。
(私何かしたっ!??)
いや、したっちゃしたのだがパニくりすぎて声を掛けることができない。
「ます、たぁああああああ!!!」
「きゃぁああああ!!!?」
いきなりカイトが抱きつく。
別の意味で今度もパニック。
「僕っ、ひとりで寂しかったんですよぉ…?暗くてっ、寒くてっ…」
「え?え?」
泣きじゃくるカイトを目の前にまだ事態が把握できない。
自分をつかむ力が強くて痛みを感じる。
「分かったから、離れて。ね?」
「嫌です」
凪の要求を即座に却下する声は必死だ。
埃に混じって淡い香りが鼻腔をくすぐる。

近くに自分より熱くなっている人がいるせいか凪の気持ちは割りと早く落ち着いた。
「………」
開きかけた口を閉じてただ相手の背中を軽くたたく。
しばらくすると玄関から
「お兄様が帰ってきたぞ~」
と空気の読めていない声がした。

状況確認。
・自分にしがみつき泣きじゃくる緑版カイト
・緑版カイトの背中を叩いてた凪

静寂。

…言い逃れ、できないっ!(BGM:革命(エチュード))
「は、離れてくれるかなぁっ?」
「い、嫌ですぅ~!」
さっきまでのいいムードはどこへやら。
優しく宥めていた凪は半ば強引にカイトを剥がそうと腕に力を入れる。
それに比例するようにカイトも腕に力を入れる。
もうムードどころでは、ない。

「んだよ~、おかえりぐらい言えよな~」(BGMストップ)
ガチャリ。
そんな無慈悲な音と共に不幸の元凶が居間に入ってくる。
「お、おかえり」
「…ただいま」

沈黙改め居た堪れない時間。

「……はぁ」(諦めの視線)
「何で何も言わずにため息だけつくの!?つっかかってよ!」
「趣味は、自分の部屋でやろうな?」(哀れみの視線)
「何でそんな解釈するの!?私は健全だよ!」
「お前ももう高校生だ。お兄ちゃん、止めないぞ」(蔑みの視線)
「言ってることと視線が合ってないじゃない!私にそんな趣味は無いの!」
「マスターは何を焦っているのですか?」
「アンタのせいだよっ!」
気付くとカイトはきょとんとした顔をしていた。

閑話休題。

凪は浮かない顔をしながら夕飯を作っていた。
風呂場では悠がカイトを洗っている、はず。(風呂場からドタバタと物音が五月蝿いのは気のせい)
「ま、マフラーはダメです!」
「んなこと言ってたら風呂入れないだろ~?」
…風呂場からは、何も、聞こえてない。

風呂場から聞こえる幻聴を耳に入れないように凪はリンゴの皮むきに専念する。
今日は適当に野菜炒めで済ますつもりだったがカイトの歓迎会をするということでそこそこいいおかずを作っている。
本当はこんな簡単な料理で祝いたくないのだが材料があまり無かったり懐が寂しかったりとこればっかりは仕方ない。
親からの仕送りは自分ひとり分の生活費しか送られてこないので悠の生活費や趣味に費やすお金はアルバイトで稼がなくてはならないのだ。

(悠ったら、いつになったら働くのやら…)
そんな事を考えていると再び風呂場から声が響いてきた。

「ボーカロイドにもついてんのな~」
「どこ見てるんですかっ!」
「よいではないか、よいではないか」
「よくありません!」
いかん、犯罪集がする。

包丁を置き洗面所のドアを開ける。
「ちょっと!何してん…!」
「あ…」
「あ…」
風呂場のドアは全開だった。

この後凪の悲鳴が家中を駆け巡ったことをここに記しておく。

「まったく!ドアぐらいちゃんと閉めておきなさい!」
「はい…」
説教すること15分。
凪は中断したままのリンゴの皮むきを再開していた。
2人は未だ正座を崩していない。
「マスター起こると怖いです」
「凪が包丁使うの久しぶりに見たわ」
「何か言った?」
「「いいえ、何でも御座いませんっ!!」」
凪の一言に2人は背筋を伸ばして答える。

凪はため息をつくと作業に取り掛かった。
本当はデザート以外の全ての料理は出来上がっていたのだがこの状況では手伝えなどと簡単に言えない。
命令という形で無理矢理やらせるか…、そんなことを考えているといつの間にか悠が側に来ていた。
後ろにはカイトもいる。
「料理、運ぼうか?」
「え?」
悠の言葉に思わず聞き返す。
「僕も手伝いますよ」
とカイトも笑う。

どうしようかと逡巡していると2人は勝手に出来上がった料理を運んで行ってしまった。
「ちょっ…」
戸惑う凪をよそに2人は勝手に料理を品定めを始める。
結局最後まで訳の分からないままだった凪はとりあえずリンゴを剥き終え、つまみ食いを始めた2人(主に悠)を止めにテーブルへ向かった。

今日の私の運勢は最高だ、なんて思いながら。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

日向さん家のボーカロイド[始まりは物置から] 4話

1日あけてこんにちわ。あかちゅきです。
なんか3話だけかなり投稿しちゃうという愚かな行為をやってしまいました。
…やってもた。
いや~、どんなに反応が遅くても待ち続ける広大な心って、必要だね。(しみじみと)
もうクリックボタン連打ですよ(良い子は真似しないでね☆)

今回は少しだけギャグ多めですっ。
悠さんの変体ぶりパないですけど。
でも、自重はしませんっ!

今頃だけどちょっとしたキャラ紹介。
日向 凪(高校1年)
日向 悠(大学6年もといニート)
二ガティー(凪のボカロ)

二ガティーはまだカイトと呼ばれてますけど次らへんでニックネームGETします。

自重は、しません(大事なことなので2回言いました
ではっ

閲覧数:137

投稿日:2009/10/27 17:16:19

文字数:2,213文字

カテゴリ:小説

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  • あかちゅき

    あかちゅき

    ご意見・ご感想

    そう言うってもらえるととても嬉しいですっ
    時々これでいいのか…なんて自己嫌悪するケドこれからも頑張りますっ!

    2009/09/28 18:39:03

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    ご意見・ご感想

    きゃあああああああああっ!!
    4話が出てるぅぅううう!!

    こんばんわ、ファン1号でs(黙れ
    ニガイトがついに起動したんですね!
    ていうかこのシチュ萌えるww

    つづき、待ってます><

    2009/09/27 22:10:20

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