僕はここにいる。
―僕はここにいる。
僕は考えるだけのいきものであった。
―こう在りたいと望んだわけでも、そうでありたくないと強く思うものであったのでもない。
そう記憶している僕がいただけだ、と、思い返す。
―そのはずだ。
僕は生きて居るが生きてはいないと、誰かが言った。
―僕はここにいるし、生きているのには違いがない。
それを理解することはなかったが、理解することはできた。そして、それが何なのかという意味を知覚することもなかった。
―ぼんやりと見ながら思うもろもろとしたことのようにしか思えない。
眺むる間の徒然なるものは曖昧模糊たらず、得体の知れる抽象となっていた。
―それは見えなかったし、ましてや、中身や含有する内側や内包された裏側があるなどとは思いもしなかった。
それは知ってはいけないことのように思えた。
―実際、見ることも感じることもできなかったのだからそうなりようもなかっただろうが。
理解という名前のWは摂理に基づいて倫理を生まなかった。
―意味がわからないのだから、理解も記憶も必要ない。
外周は小さいままに中へ中へと脱ぎ捨て続ける異常は、変化とも倦怠とも無縁の日々を停滞と結んだ。
―僕はここにいる。
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