~名も無き砂浜~
「このまま私は消えるしかないのね…」
―貴女が一番望むことが叶えられない場合貴女は死ぬわよ?
私がその時望んだことは王子と結婚すること
ズキンと頭が痛み蘇るあの新月の晩の記憶。
あの黒魔女まさか…
レイチェルの双子の姉……!!!!!!!
「どうかした?ラヴィア姉さん」
優しい声に反応し私は振り向いた。
「レイチェル…!!貴方どうしてこんなとこに…?」
と言いたいとこだったが声が出なく唸るしか出来なかった。
それを察していたかのように彼は棒きれを私に手渡した。
―どうしてここに?まさか貴方もあの魔女に!
「忘れたの?ボクは一応王子だからね。許可さえもらえば人間界にも行けるんだよ」
―そぅだったね……
「あの魔女…姉さんから声を奪ったのか。なんて残酷な奴なんだ。姉さんが人に恨まれるような事をするわけないのに」
「……」
私は同意出来なかった。
答えはノーだから。
だけどこのままじゃ私…死ぬんだ。死ぬなんて嫌。この子はまだ私を本当の姉だと信じてる。
なら…
―助けてレイチェル……私あの魔女に罠にはめられたの…
「罠に……?」
そして私は魔女の分身が城にいること。
王子と結婚出来なければ死んでしまうこと。
全てはあの魔女が悪いように砂に言葉を書いた。
すると彼は私が文字を書いた砂を彼は強く憎しみを込めた目で見つめ、グッと砂を握りしめた。
「………なんて奴だ。許せない…。絶対にボクがあの黒魔女の罠なんてぶっ壊してやる!!」
―…ありがとうレイチェル
そのまま彼は夜明け前にもう一度ここでと呟き、海に飛び込んだ。
~aquatopia―黒魔女の洞窟―~
荒々しく一人の人魚が洞窟の中に入ってきた。
「黒魔女リンはどこだ…!」
いきなり短刀を振り回し門番に刀を向けた。
「手荒な真似は止していただけますか?」
「お前が黒魔女か…?」
「えぇ……ようこそ人魚族の王子様?私が黒魔女リンです」
「姉さんの声を返せ!!!!!この悪女が!!」
「わかったわよ…!」
一瞬怯んだ表情を見せたが、彼女は冷たく言い放った。
「だけど悪女……ねぇ。初対面…でもないけど少し失礼な奴ね。少しお仕置きをしてあげる♪」
「お仕置き…華奢な貴様がボクに勝てるはずがない」
対峙する魔女と人魚。
「そうかしら?アイシクル…この子を私の前にひれ伏せさせて」
「かしこまりました我がマスター」
そう言うと長身の黒ずくめな大人が現れボクの手にあった短剣をはたき落とすと思いっきり地面にボクを叩きつけた。
「……かはっ……他の奴を使うなんて卑怯だ!」
「卑怯…?卑怯なのは貴方の姉ね。この期に及んでまだ貴方の優しさにつけ込んで偽りを重ねる」
「どういう意味だ…」
「今の貴方には理解できないわ。だから…」
そう言いクスッと笑った彼女はボクの顔の前に素足を出した。
「あの人魚の声を返して欲しかったら、私の素足に口づけを施しなさいレン…」
―……レン?ボクの名はレイチェルだ
でもこの名の響き…どこか懐かしいのは何故?
「あぁ口づけくらい施してやるさ……黒魔女よ」
ボクは黒魔女に口づけをした。
屈辱を何故か感じることはなく、むしろボクは昔から決められていた行為のようにそれをやりのけた。
だけど彼女は、ボクの目を見て一瞬泣きそうになった。
どうしてなんだ?
彼女はその後ボクに声の入ったビンを渡し、無言で姿を消した。
そしてボクは陸に戻ると姉さんにビンを渡し、泣きながら
「ありがとう」
とお礼をいう優しい姉さんに笑いかけた。
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