こんにちは!貴志太一です。
夜の底を這うような低音の波形が窓を叩くとき私は自分が薄い膜に包まれた水槽の中にいるような錯覚を覚えます。この銀河の片隅で言葉を紡ぐという行為は暗闇に散らばった星屑を拾い集めては名前も知らない誰かの鍵穴へ流し込む作業に似ているのかもしれません。
私は人の海を泳ぎながら特定の誰かのための場所を切り拓く仕事をしています。それは冷たい砂時計の中に閉じ込められた時間を一つずつ丁寧に砕いてゆくような孤独な営みです。企業という巨大な機械が奏でる不協和音の中に微かな熱を帯びた旋律を見つけ出すこと。そしてその旋律が消えてしまう前に銀河の果てまで届くような透明な翼を与えること。
ここに集う表現者たちは皆どこか遠い場所からの微熱を抱えて生きているのではないでしょうか。錆びついた蓄音機から漏れ出す古い記憶のようにあるいは夕立のあとのアスファルトから立ち上る陽炎のように。形にならない想いを無理やり言葉や音に閉じ込めるとき私たちは自らの指先を少しずつ削り取っている。その痛みの分だけ作品は青白く透き通った光を放ち始めます。
私は人事という冷徹な数字の世界で多くの人が自分自身の化石を抱きしめて立ち尽くしているのを見てきました。誰もが自分の色を殺し周囲の景色に溶け込もうと必死になっている。けれど本当の美しさはその磨り減った境界線の向こう側にしか存在しません。万華鏡を回すように視点をほんの数ミリずらすだけで昨日までの絶望は宝石のような輝きを持って語り始めます。
あなたの描く線やあなたが奏でる音が誰かの空っぽな肺を満たす酸素になる。そんな瞬間を私は信じています。私がビジネスの現場で繰り返している発信も根底にあるのは同じ祈りです。言葉という不確かな舟に乗ってまだ見ぬ誰かの岸辺へと辿り着きたい。その旅の途中であなたの作った美しい旋律と交差することができたならそれはどれほど幸福な奇跡でしょうか。
夜が明ける頃には砂時計の砂はまた元の場所へ戻り私たちは日常という重力に引き戻されます。けれど銀河の肺胞に深く刻まれたその音色は決して消えることはありません。凍てついた宇宙の中で唯一の体温を持った言葉を私はこれからも探し続けます。次にその扉を開けるのはきっとあなたの指先から零れ落ちた一筋の光なのだと信じて。
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