体調が良くないと言った私を鈴夢は医務室に連れて来た。私がベッドに入ったのを心配そうに見詰めてる。
「ごめんなさい…。」
「気にするな、館林先生呼んで来るから少し待ってろ。」
「寝てれば治るから大丈夫。それに先生だって忙しいだろうし。」
「それでも最近寝不足だったろ?病院に連絡しても良い位だ。」
髪をくしゃりと撫でると鈴夢は携帯を片手に廊下に出て行った。
「…鈴夢…。」
声を殺しても涙は止まらなかった。胸が握り潰される様に苦しくて叫びたい位だった。握り締めた携帯から無機質に音が鳴って、耳にそれが響いて益々苦しくなった。
「怖い?」
「――っ!!」
何時の間にか其処には七海志揮が立っていた。やけに落ち着いた様子でベッドに座る私を見下ろしている。
「怖いだろうね。」
「…やっ!」
穏かな口調だけど手首を掴む力は凄く強くて全身に震えが走った。思わず振り解こうとしたのを嘲笑う様に両手を強く握られた。
「良いの?逃げて…見殺しにする?」
「…止めて…行くから…!もう止めて…!お願い…!」
「良い子だね…それに優しい…。」
涙で視界がぼやける中、手を引かれて歩いていた。地面の感覚が無くて時々足がもつれて転びそうになる。その度に手を痛い程掴まれて、また歩いて、気が付くと薄暗い場所に来ていた。
「来月には取り壊される旧校舎か…御誂え向きだな、俺と同じで要らない物だ。」
自嘲気味に笑って言うと、そのまま私の首にゆっくり手を掛けた。声も出ない…ガタガタと震える唇から息を吐く音だけが聞こえる。
「あの2人なら校内に居る、後夜祭の花火を合図に元に戻るよ、尤も…君がそれを確かめる事はもう無いけどね…。」
「う…あ…っ!」
容赦の無い力が首を締め付けた。ひゅうひゅう鳴る喉は何も吸い込めないまま、目の前が脈打つ度に暗くなって行く。
「皮肉だな…道具にされて、利用されて、愛されて、守られて、助けられて…でも最後は俺の腕の中なんてさ…。」
その声を最後に真っ暗になった。
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