浮田妃菜です。
夜の帳が降りる頃、静かな雨が街を包んだ。アスファルトに落ちる雫が、まるで囁き声のように響く。人々は家路を急ぎ、商店の軒先には雨宿りをする人々が集まっていた。
そんな中、雨の中を歩く一人の少女がいた。名を美咲という。彼女は空を見上げ、雨粒が頬を濡らすのも気にせず、夜の冷たい風を全身で感じていた。
美咲には幼い頃からの習慣があった。雨の日の夜、空を見上げること。彼女の祖父がよく言っていた。「雨の向こうには、いつも星があるんだよ。どんなに厚い雲が覆っても、星は決して消えたりしない」
祖父が亡くなった後も、その言葉は美咲の心の中で生き続けていた。だから、どんなに辛いことがあっても、雨の日には外に出て空を仰ぐ。まるでそこに祖父の姿を探しているかのように。
この夜も、美咲は傘を持たずに歩いていた。雨が降るほど、星が恋しくなる。彼女はゆっくりと街の明かりから離れ、公園のベンチに腰掛けた。雨の音だけが響く静寂の中、遠くで雷が光った。
すると、不意に誰かが彼女の隣に座った。顔を上げると、同じ学校のクラスメートである翔太だった。
「また雨の中で星を探してるのか?」
彼は微笑みながら、美咲に傘を差し出した。翔太は彼女の秘密を知っていた。何度も雨の夜に彼女を見かけ、その度に遠くから見守っていたのだ。
「うん……でも今日は、見えそうにないね」
美咲が寂しそうに呟くと、翔太は空を見上げて言った。
「でも、きっと向こう側にはあるよ。雲の上には、いつも星が光ってるんだから」
彼の言葉に、美咲は思わず微笑んだ。まるで祖父の声を聞いたような気がした。雨が上がると、空にはかすかに星が輝き始めていた。
「ほら、見えるよ」
翔太が指さした先に、一つの星が輝いていた。美咲の頬を流れる雨粒が、いつの間にか涙に変わっていた。
「ありがとう、翔太」
二人は並んで星空を見上げた。雨上がりの空には、無数の星が美しく輝いていた。
浮田妃菜の小説:雨と星空
浮田妃菜です。趣味の小説投稿です。
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