いつからなんてことは覚えてない。
いつの間にか好きになってた。
でも、この恋が叶うことは無い。
自分の恋に気付いたように、彼の恋にも気付いてしまったから。
甘くとろける。そんな恋は求めてない。
なんだか本物じゃないような気がする。
夢のように消えてしまいそう。
そう考えたら、今の私の恋は本物。
だって、甘くない。ほんのり甘いけど、苦い。
捨てようかと思う時もある。
忘れようかと思う時も。
でも、苦いだけじゃないから、幸せだと思う時もあるから…。
やっぱり捨てられない。忘れられない。
そんな、私の恋。
「悪ィ、消しゴム貸して」
「はい」
「サンキュ」
これが彼との始めての会話だった。
なんの変哲もない日常会話。
席が近かったこともあり、何度か言葉を交わすうちにお互い1番の友人になった。
宿題を見せ合ったり、雑談して笑ったり愚痴ったり、喧嘩したり。
授業中コソコソ会話して立たされた記憶もある。
たまに学校帰りにハンバーガーショップへ寄って一緒に食べる。
今はもう慣れたけど、チーズバーガーを5つ以上注文して食べることには驚いた。
ジッと見つめていると「食うか?」と彼は尋ねる。
そういう意味で見てたんじゃない。
確かに友達だった。
これが恋へと変わったのは、いつからだったのか。
自分が気付かなかっただけで、本当はもう、この恋は始まっていたのかもしれない。
「グミ」
彼が私の名前を呼ぶたびに胸がドキドキと高鳴る。
「マジかよ!」
彼が笑うたびにキュンと顔が熱くなる。
そんな自分に驚いて固まってると、彼が「大丈夫か?」と私の顔を覗き込んだ。
死ぬかと思った。
恋に気付いた後は、土日に一緒に出掛けるときも服とか髪型とかをものすごく気にするようになった。
カジュアルにいくかガーリーにいくか。
あんまりヒラヒラしたようなやつを着て行って引かれたら困る。
髪の寝癖がなかなか直らないときは隠すために括ったり帽子かぶったり。
それでも納得ができなくて泣きそうになったり。
少しでも可愛くなりたくて、雑誌を読んで研究したりもした。
今思うと、なんだかふわふわしていたような、そんな感じがする。
幸せだった。
雨が降っている。
しとしと、しとしと。
私はカフェの中から外の様子を見ていた。
そういえば、彼と相合傘をしたことがある。
彼が傘を忘れて、勝手に入ってきた。
口では文句と皮肉しか言ってなかったけど、内心ガッツポーズ。
よく友人に、アイツのどこが良いのかと聞かれる。
ハッキリ言ってわからない。
見た目は悪くないけど、イケメンなら他にもいる。
勉強はからっきしダメ。バカ。
運動は出来ることは出来るけど、そこそこ程度。
ただ、あの明るさと笑顔は、誰にも負けないんじゃないかと思う。
そんな彼が、私は好きだった。
先生に頼まれ職員室へプリントを届けに行く。その帰りだった。
階段付近で、彼と見知らぬ女子生徒が話していた。
その様子を見た瞬間「あぁ」と思った。
耳が真っ赤で、頭の後ろを掻きながらへなへなしている。
情けないことこのうえない。
でもこれが、恋をした彼。
どうしようもない喪失感に一人涙した。
別の日。
「好きな奴を好きにさせるのはどうすればいいと思う?」
あのときと同じように耳を赤く染め、真剣な表情で聞いてきた。
そんなの、こっちが聞きたい。
壊れそうな心と零れ落ちそうな涙を無視して、やんわりと笑う。
「他愛もない雑談して、笑って、喧嘩して、目の前でチーズバーガー5つ以上食べて、相合傘したら好きになってくれるんじゃない?」
彼は驚いた顔を見せる。
いくら鈍くても、ここまで言ったらわかったかな…。
少し間を置いて彼が言った言葉に、私は驚き、笑った。
「そうか。お前も恋してんのか。どんな奴なんだ?」
バカだ。鈍いにも程がある。
バカ、バカ、バカ、バカ。
「本っ当に、バカな奴だよ」
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ご意見・ご感想
s86(exたねだ)
ご意見・ご感想
返事がとても遅くなって申し訳ありません!!
物語読ませていただきました!
自分の中ではまだまだぼやんとしてたイメージがKoZUさんの作品によって
グミちゃんや相手の男の子のバックグラウンドが見えてきて
そうゆうことだったのかー!っと思いながらすごい楽しく読ませていただきました!!
この後二人はどのようになっていくんでしょうかねー?
貴重な経験をさせていただいてありがとうございます^^
歌詞の方については採用させていただく作品が決まりましたらまたご連絡いたします!
ありがとうございました!
2010/10/13 15:04:15