「君の体温」





僕には大切な彼女がいる。

彼女は明るく元気で、優しくて、僕なんかとは大違い。

そんな彼女といると毎日が楽しかった。

でも、そんな彼女に僕は一つ違和感を感じていた。

それは彼女の右手だけが毎日冷たいこと。

もしかしたら僕の勘違いかもしれない。

そうだったらいいのにと、自分の心に言い聞かせていた。





彼女が僕の家に泊まりに来た。

初めての彼女との夜。

その日は彼女のすべてをも奪いたいと思っていた。

そっと彼女の頬に触れ、唇に触れ、彼女の右手に触れた。

やはり彼女の右手は冷たかった。

僕は彼女の服の袖をめくり、彼女の右腕をみた。

その腕は僕が想像していた以上に細く、そしてその細い腕に

てあたりしだいにとって縛り付けたゴムがある。

そこには以前からしばりつけてあったような痕もあった。

僕はその光景に唖然とした。

でも、彼女はなにひとつ表情を変えなかった。

僕は彼女の手に縛りついたゴムに手をかけ、ゆっくりと

一本ずつ、ほどいた。

彼女はそれでも表情を変えず、ただただ笑っていた。

にっこりと、いつもの笑顔で。

僕はすべてのゴムをほどき終わって、ゆっくり彼女の右腕の

痕をなぞった。

だんだん血がかよっていくのが分かる。

僕は優しく手を握り締めた。

何かがほどけていくように彼女の表情も変わっていった。

さっきの笑顔が嘘のようだ。

彼女の本当の表情。

切なくて、誰かに助けを求めてるような表情。




『大丈夫、今度からは僕が君の手を暖める、だからもう自分を苦しめることはないんだよ。』



彼女は僕の手を握り返した。



彼女の手は暖かかった。









=END=


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

「君の体温」

なんかメンヘラっぽい女の子のお話でも書こうかな
とかそういう軽い気持ちです。
実際自分もそんな感じだったりするときもあったんで、
なんで彼女がこうしたのかとかそういうのに深い理由はないんです。
ただ気付いてほしかっただけなんです。
ただそれだけなんです。

・・とか分かったようなこと言ってみるw

閲覧数:85

投稿日:2013/03/14 00:29:49

文字数:738文字

カテゴリ:小説

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