※警告という名の諸注意、やっちゃったよセルフパロ

・帯人×女性マスター(篠武)
・カイトは出てきません
・妄想による世界観、しかも本家よりダーク。
・オリキャラ満載(オリキャラは名前・設定ともにシャングリラと同じ・若干性格は変わっている場合もあり)
・帯人はアンドロイド・機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』

※ここ大事※
 多分いないとは思いますが…万が一、本家シャングリラを少しでも気に入ってくださっている方がおりましたら、今すぐ全力で引き返してください!本家シャングリラとは一切関係ありません。悪いのは全面的に私ですorz

恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです

上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ




☆☆☆☆☆☆☆




24.

SIED・KANA


篠武さんの母親…有栖は、世界経済の半分は牛耳ると言われる大企業を立ち上げた、一族の頂点に立つ男のたった一人の息女だった。

各国に網の目状に張り巡らされた系列、関連会社は幾万を超え…だけどそのせいで、副作用とも言える問題も多くて。
肥大化しすぎた組織の人間関係…殊に、醜い権力争いや血生臭い継承者問題に何度も曝されて、嫌気の差した有栖はまだ十六歳の若さで全てを捨てた。
そして、ちょうどその頃、一族と絶縁して日系企業を立ち上げた私を頼り渡日。
穏やかに数年を過ごし、結婚妊娠…順風満帆な日々を過ごしていた。


なのに。


妊娠中だった有栖を見つけ出したクソ爺…いえ、有栖の父親が帰国を迫り、それを拒んだ彼女にある条件を突きつけた。

『だったら、生まれてくる子供は一族の跡取りとして、この私に預けること、』

可愛い娘から、その子供を取り上げようとするなんて…酷い父親よね。


でも、有栖も負けてはいなかった。


せめて成人するまでは、親元で育てたいと押し切った彼女は、ある計画を立てる。

生まれてくる子供…篠武さんを、一族の楔から解放する為に。

有栖は生まれた子供の性別を偽り、男の子だと出生届を出した。
小さいうちには見た目の性別なんて曖昧だけど、第二次性徴期を過ぎれば、自然と身体は丸みを帯びて『女』になる。
頃合を見て、『篠武君は亡くなった、』と…篠武さんを男と認識しているクソ爺…いえ、有栖の父親を始め、親族たちに虚偽の報告をしてしまえば。
数年後、完璧な女の身体を手に入れた彼女は、誰にも気づかれることなく晴れて自由の身になれる。
そのために、犠牲にするものも多いけれど、背に腹は代えられなかった。

でもまさか…。


(有栖が、殺されてしまうなんて…、)

一族に籍を置く末端の誰かが、篠武さんを利用してのし上がる為に…邪魔な両親を消してしまった。
でも、私に悲しんでいる暇はなかった。そんな連中から篠武さんを守る為に、…有栖の遺志を引き継ぐ為に。

(絶望の中、自殺を図った篠武さんを、そのまま本当に死んだことにして、世間から存在すべてを抹消して…、)



でも、本当にこれでよかったのかしら。



周囲の都合で歪めてしまった彼女の人生は、本当に幸せだと言えるのか…私は時々、考える。




25.

SIED・SINOBU


物心ついた頃、オレは自分の認識する『自分自身』と、周囲の扱いとのズレに気が付いた。七五三を迎え、赤やピンクの華やかな着物を期待していたオレに着せられたのは、黒紋付と縦縞袴…。

『篠武、あなたは男の子なのよ、』

心も身体も、紛うことなく女の子なのに、お母さんは何を言っているのだろう…?
与えられるものは、服も靴も雑貨もおもちゃも漫画も全部、何もかも男の子向けのものばかり。可愛いクマのぬいぐるみが欲しいと言っても、絶対に買っては貰えなかった。

どうして?なんで?私はお人形が欲しい。お花の模様のワンピースが欲しい。赤いリボンのついたバッグが欲しいの。

『ごめんね、全部あなたの為なの。大人になるまで、我慢してちょうだい、』

そう言って、何度も泣いて謝る母親に、結局オレは口を噤み…従うしかなかったのだけれど。

最初は戸惑うことも多かったが、次第に慣れていくにつれて、オレはむしろそんな境遇を楽しむようになっていった。
近所のおばちゃん、友人、先輩、先生、周囲にいる人間を欺き、自分を偽ってする生活は、なかなかにスリリングで刺激的に感じられた。


(今思えば…無理やりにでも前向きに考えて、崩れそうな心のバランスを、何とかして取ろうとしていたのかも知れない、)

結局、思春期を迎える頃まで、オレは『男』だった。


十二歳の夏に、両親が殺されるまでは。


ショックで自殺未遂を起こしたオレは、昔から母親と懇意にしていた加奈さんに引き取られ、今度は『女』に戻ることを強制された。
与えられるものは、桜色のキャミソール、エナメルのパンプス、バラの香水、各種化粧品など、若い女性の好みそうなものばかり。


正直、吐き気がした。


数年前には確かに憧れていたそれらに、いつの間にかオレは全く興味が持てなくなっていたのだ。

(挙句、拒絶反応からくるストレスで、拒食症寸前までいったもんなー、)

あの手この手で矯正しようと試みた加奈さんも、最後には諦めてくれたけれど。
結果、オレは男でも女でもない中途半端な存在になった。

(まぁ、最近はそれも個性だと思えるようになったけどな、)




だけど、今でもたまに思うのは。

もしもオレが本当に男だったら、『女の子』として育てられたのだろうかとか、もしも普通の家庭に生まれていたら、どんな生活をしていたのだろうかとか。
ごく平凡の、他の大多数の人たちのように、ありのまま成長して、思春期特有の葛藤を経験して、恋なんかもしちゃったりして、家族やたくさんの友人たちに祝福されて結婚…とか?

(はは、…ねぇな、)

でもそれなりに、月並みな幸せを手にしていたんじゃないか、とは思う。


…今更考えたって、どうしようもないのはわかっているんだ。




(あの日…、)

家族も、友人も、戸籍さえも失くして、世界のどこにも居場所のない出来そこないのオレは、あとどのくらい生きていなきゃいけないんだろう。



続く

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

※亜種注意※Lost.Eden//叶わなかったシャングリラ【帯マス】第九話

完全に篠武さんのターン…。
あれ、帯っちゃん欠片も出てこないしorz

閲覧数:50

投稿日:2016/09/25 12:08:52

文字数:2,597文字

カテゴリ:小説

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