(このストーリーはすべて、フィクションです)

蝉の声。「ミーン ミーン ミーン・・・」

この映像は2008年の8月ー
その日真夏の空に、入道雲が盛り上がっていたのでした。

今年の「ここ」は何故か雨が降らない、からっからの
梅雨を越して、もうすでに今夏最高気温を記録。

猛暑の中を「泳ぐ」人たちの影が、陽炎のように
ゆれています。

そんな或る日のことでした。

 「みさなん、こんにちは。ナレーターのE、と申します。
  連日酷暑が続いていますが、みなさん、体調などを
  崩してはおりませんか?
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうですか。
  ごもっともです。毎日暑いですから、こまめに水分と
  睡眠に励みましょう。
  かくいうわたくしは、もう夏ばてってしまって、ホニャララしてます。
  て言うか、意味不明ですね汗」
  
   
(Eナレーション)
  ちょっと時間を遡りますね。
  あれはちょうど、  
  桜が舞った少し後のことでした。
  一人旅のような彼女は、とある都市のローカル線に
  乗っていました。
  目指す駅は、旧U町のある小さな駅。
  H駅を過ぎたあたりから、突然のぞかな
  田園風景が列車を待ち受けます。
  地方ローカル単線、列車の軋み音が激しく鳴っていて
  私はつい、20年前の高校生時代を思い出してしまいました。
  人口約5万人のI市を通り過ぎた頃突然、雨が振り出しました。
  列車の車窓にも丸い透明な粒が浮かんでいます。
  けれど、東の空を見上げてると、晴天です。
  約5分後、すぐに雨は止みました。      
  どうやら、ただの気まぐれ小雨だったようです。
  市街地をゆっくりと進みながら、憂鬱になりそうでならないみたいな。
  郊外を抜けると春野菜が実った田園風景の中をゆったりと走って行きます。
  長閑な田園風景の中に時々警笛が鳴ります。そして、
  どんどんと田園風景が広がり、和泉山脈が間近に迫ってきます。
  春の新緑がパノラマのように、車窓をスクリーンにして。
  桜は散りましたけど、今度はツツジが咲き誇る。
  そういう季節の中、彼女は旅をしています。
  遠路はるばる?今日の旅人は、どちらに行かれるのでしょうか?        
  そうこうしている内に、彼女が目指した駅に到着しました。
  列車はゆっくりと・・・それでも激しく、進入してゆきます。
  なだらかに停車して、空気が一気に破裂したようなドアの
  開く音。
  まばらに降りていく若い乗客達。
  今日の旅人は彼ら、彼女たちと一緒に降りたようです。
  そして、降りていった学生服たちは、駅舎から去って行きます。
  ポツンと駅のホームに取り残されてしまった彼女は、
  これが「彼の原風景」だと感じたようです。


  私達、映像サークルに届いたお手紙を紹介します。
  市内の高校生のようです。文面の終りに書かれていたこの一節、
  『後悔なんて言葉はいらないから!
  何度も何度も何度も、
  私の過去を埋めてくださいと、
  どれだけ祈っただろう・・・・・・』
  彼女に一体何があったのでしょう?心配でした。
  後日連絡をとり、彼女と会って話しを聞いてみたところ、いろいろと
  あったようです・・・
  けれど、私たちの説得と励ましで幾分か、心が落ち着いたよう    
  す。本当によかった・・・
                
  (Eナレーション)
  今日も旅の撮影には、数名のスタッフと、旅するもう一人の
  彼女の恋人? いえいえ失礼、心を許せるマブダチのS君が帯同しています。
  DVDビデオを片手に撮影をしているS君。
  高校時代は陸上部でした。
  種目は中距離走。その種目が得意でいつもそればっかり練習していたそうです。
  だから何度もコーチに叱られて。けれど言うことをきかん坊だったらしく。
  三年生の時、地方予選で山道を走行中、足を滑らせて挫いたそうです。
  その際生じた怪我が原因で、地方予選で中盤に落ち、学校は敗退したのです。
  S君は何度も何度も悔しいと泣いて、仲間から労われ、部活を引退しました。
  




  本編
(E=ナレーション)
(スタッフ=撮影スタッフ) 
E: 時は少し進みます。それは、6月の快晴のある一日。

 「(S君)、手ぶれしちゃだめよ!」
 「ヴゥレアウィッチ、みたいっすよ」
 「ヴゥレア?・・・ふるっ!観てないよ私」
        
E:登場したのは旅人、魔女、でした。
   
 「じゃーん。イチゴっす、しかも、とよのか」
        
E:ビデオにわざわざ映す演出は・・・
         

 「このイチゴはお土産でーす。K産の・・・」
 「多分、要らないと思うけど(苦笑)」
 「コレ、賄賂です」スタッフ爆笑
 「絶対要らないと思うよソレ。(ボソッと)受け取らないと思うよ多分」
 「そんなことどーでもええわ。(笑)嫌でも口にぶち込む」
 「コワ・・あんた女じゃね」
 「今のモラハラ」
 「だっけ?(スタッフ苦笑)違うよね?○○(ピー音)、言葉違ってるよ(笑)」
 「コラ!実名だすな!(振り向いて怒)」
  
E:私が代わりに実名出しましょうか?

 「取らないならさぁ(受け取らない)、○○君(ピー音)に無理やり食わせる」
 「○○(ピー音)、後ろ姿がメチャ怖いんだけど・・・」
 「だから、実名だすなって!(また振り向く)」スタッフ苦笑

E:いや、既に面われていますけど?


E:そう言えばさっきから歩いてばかりいる、この魔女、なんかムサイ感じが
  するけど。そんなこと言ったら私、後で消されちゃいます(笑)
        
 「あのさぁ。さっきから実名結構出てない?モチ、ピー入れるよね?」
 「入れる。常識」
 「♪ピーピーピーピー(鼻歌)多分五月蝿いよね。観てる人」
 「○○○○(ピー音・下ネタ)」
  スタッフ爆笑

E:まぁ、品がないこと・・・
        
 「おまえ・・・今のアカンやろ(怒)」
 「えっ?(振り向く)編集すりゃいいんじゃん。そんなの~」
 「使うよ(笑)」
 「マジで?たまにいいよね」
 「よくね・・・鼻息荒いし」

E:旅していた彼女と同一人物なのか・・・疑わしくなりました(笑)
        
 「疲れた」  
 「運動不足」 
 「拾ってるの?鼻息」
 「拾ってる。多分」
「鼻息で何か歌おうか?」
 「だからエロイのやめろって」(スタッフ笑) 
 「ねぇねぇ何処にあるのよぉ(立ち止まってまた振り向く)」
 「あの丘の上、学校だから」スタッフの声
 「あれっ?(指差し)あの建物、学校なの?」
 「そう(苦笑)知らなかったの?(俺ら)地元だろ~」
 「わたし、全然知らなかった(鼻息)」
  スタッフから苦笑 
 「おまえ(苦笑)」
 「だって、私、知らないよぉ~。出身、違う処だもん」
 「恥知らず女が行く、W校への道(爆笑)」
 「いいねぇ、それ使う?(振り向く)」
 「使えねーよ(笑)」

E:いや、下ネタ大好きの魔女、で充分です



E:ところで、また時間が戻っちゃうけど、この取材に到るまでには
 大きな障壁が立ちはだかりました。   

E:そうです。あの事件は3月に起こりました。
 これは私たちが密かに取材を申し込んでいたころの出来事で、
 それまでの一年半、交渉してきたすべてが、終焉を迎えるような
 事態に陥りました。
 たった、一枚の写真で・・・。
 のちに騒動を起こしてしまいます。
 突然私たちに学校側から連絡が入り、取材を延期してほしいという
 申し出がありました。
 私たちはただの、社会人部活動みたいな存在。
 返事ぱ了解し、延期することになります。

         2部につづく。

(このストーリーはフィクションです)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

フィクション。社会人映像クラブのある取材

この形式・ストーリーはすべてフィクションです。
とある社会人映像サークルは、市内にある有名高校の野球部の取材を企画し、ドキュメンタリーとして製作しようとする。しかし、春の大会で起こしたとある事案が「騒動」の発端となり企画・取材が頓挫してしまう。学校側から取材の延期を申し出があるが、サークルは騒動の当該者がかつて在籍していた少年野球クラブへの取材を敢行してしまうーしかし、この取材が端を発して、映像サークルが単なる趣味サークルからワイドショー的サークルへと変化して行く。そんな中でサークル参加者の間に亀裂と葛藤が生じて行くのだった・・・

閲覧数:51

投稿日:2010/11/14 00:42:13

文字数:3,324文字

カテゴリ:その他

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