欠けるモノなんかない、素晴らしい世界。満ち足りた世界。僕は笑って、遊びに来たよ、と告げる。二人は笑って、やったぁ、ご主人様が遊んでくれるって、と、喜んでいる。あぁ、と、息を吐く。この、楽しい時間は、やはり何物にも替えがたい。
「へぇ、なにするんだい?」
あれ?誰だ、この人。僕はこんなシルクハットの紳士なんか造った覚えは無いぞ。
「あの、失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「ん?私かい。私は、デバッカーさ。」
…?なんだ、それは。職業か?
「でばっかー、とは、何をする人なんですか?」
「バグを削除する人さ。」
「バグ、とは、なんなのでしょうか。」
「ここみたいな、或る筈のない世界のことさ。」
どうやら、紳士は、この素晴らしい世界を壊そうとしているらしい。嫌だ。とんでもなく、嫌だ。第一、ここに住んでいる双子達はどうなるんだ。
「この世界を壊すんですか?」
「そうだよ。」
怖い。自らの世界を破壊されることが、とんでもなく怖い。笑って頷く、紳士が怖い。
「何故、ですか。」
「こんなに空虚で、しかし美しい世界は、君の望んだモノなのかな?」
質問で返された。
「そうです。だから、この世界を造ったのです。」
「そうか。でも、この世界はとてもはかなく、壊れやすい。」
「そんなことはない。この双子だって、僕が居なくたって、生きることができる。」
「それが壊れやすいと言っている。生きるだけじゃない、死ぬことも出来ずに、唯君のことを待ち続けるんだよ。君がここに来なくなろうとも、ずっと、ね。」
それを聞いて、僕は驚いた。この世界は、始めて僕が来た時から、こんなだったから。双子達がいて、王様がいて、僕がいる世界。変わらない、と言うことの恐ろしさに、僕はやっと気付いた。時が流れない世界を造ってしまったということに。
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