彼は私の首を掴みそのまま押し倒し馬乗り状態のまま、今まで見たこともないような形相で喚きだした。
「お前なんかただの餌-え-のくせに!!」
私の首がめりっ・・・と鳴いた。
「だったら・・・ただの餌だと言うならなぜ私を真っ先にやらない・・・?」
私の一言に意表をつかれたらしい彼は押し黙るようにして、首にかけていた手も緩んだ。
私が気付いてないと思っていたのだろうか。
だとしたら目出度すぎる。
「知るか・・・」
今まで私を睨み付けていた瞳も、今は逸らされている。
「お前がやっているのだろう?」
「・・・何の話だ?」
あからさまに目が泳ぐ。
近頃頻発している殺人事件・・・
それのどれもが体内の血液が全て抜かれているというのに血痕が一切ないというオカルトめいたものなのだ。
「お前の一番近くにいて隙だらけの私を、なぜ真っ先にやらない・・・?」
私の言葉にニヤリとほくそ笑むと
「・・・やって欲しいんなら今すぐにでもやってやるよ」
と宣う。
だから私も吐き捨てた。
「あぁ、そうだな・・・お前の好きにすればいい」
私はその時を待っているのだから・・・
目を伏せ、私はその時を待った。
だがやはりその時は訪れることはなく彼は私の上から離れた。
「お前はいつでもやれる・・・だからまだやらない」
お前は俺の・・・非常食だからな。
と吐き捨てるなり外へ出て行った。
これから真夜中のディナータイムらしい。
「今日もまた死に損なった・・・か」
自分の愚かしい言動に嘲笑が漏れる。
彼は私を殺さない。
殺せない。
わかっている。
わかっているのにそれを望んでしまう私がいる。
この望みで彼も、そして私自身も苦しんでいるというのに私はこの望みを捨てきれずにいる。
目から溢れた滴がこめかみを伝い、髪がそれを受け止める。
仰ぎ見る天井が今日はやけに高く見えた。
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