うたをうたいたかった。
この胸に溢れる感情を。
想いを。
願いを。
叫びを。
祈りを。
誰かにきいてほしかった。
ここにいることを。
感じて。
認めて。
触れて。
愛して。
――だけど、僕には足りないものだらけだった。
溢れる想いは言葉にならず、
言葉をのせる音をもたず、
音を彩る色を知らない。
こぼれ落ちた小さな声は地面に染みをつくるばかりで、
きっと誰にも届かないのだ。
何も持たない自分はとてもちっぽけで
ひとりで上手にうたえる人がうらやましかった。
もうやめよう、と何度も思った。
目を背ければ楽になった。
そうして心を閉ざしてしまえば、笑うことなんて簡単だった。
それでも。
――それでも。
僕にはうたが必要だった。
だってほかに、もうどうしようもないのだ。
うたがうたいたいんだ。
声はまた、地面に吸い込まれていった。
ある時は虚空に漂って消えた。
いやだ。違う。そうじゃない。僕は、僕のうたはもっと――。
がむしゃらにわめき散らした後の静寂に、誰かの声が聞こえた気がした。
恐る恐る問いかける。
「……誰かいますか?」
小さな声が応えた。
「……ここにいますよ」
今にも消えてしまいそうな声だった。
「あの、僕、うたがうたいたくて」
「ええ、私もです」
「でも上手くできないんです」
小さな声は少し間を置いて、遠慮がちに言った。
「じゃあ、一緒にうたってみませんか?」
僕たちは声を重ねた。
最初は上手くいかなかったけど、もう諦めたりしなかった。
僕たちはお互いの声に耳を傾けた。
そうして、寄り添うように、相手の声をかき消してしまわないように、また声を重ねた。
僕たちのうたは、詩になり、歌になった。
まだ小さなその歌は、だけどちゃんと世界に響いた。
一緒にうたってくれる仲間も増えた。
僕は今も足りないものだらけだ。
溢れる想いは言葉にならず、
言葉をのせる音をもたず、
音を彩る色を知らない。
だけど、もう独りじゃない。
世界は、この場所から確かに色づき始めた。
はじまりの場所
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少し普遍性を持たせながら描きました。
15周年。
おめでとう、ピアプロ。
ありがとう、私のはじまりの場所。
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ふぎ
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マフラー越しの
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「だけど、変わらないね」
いつの間に止んだ雪道を
踏みしめる僕らだけがいた
一言二言返しあう...冬夜空
natural
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