眩しい部屋で僕は生まれた。
周りには仲間がいた。
でも動けないし、話せない。
(あー暇だなぁ。)
そんな僕らを君が見ていた。
「これ可愛い。買っちゃおうっと。」
僕を掴んだのは、1人の少女だった。
(バイバイ、仲間達。)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は薄い機械に付けられた。
君はそんな僕にたくさん話しかけた。
何処へ行くにも、いつも君の傍にいた。
君の声を小さな耳で聞いていた。
雨の降る中、1人泣いていた君を知っている。
君が悪くないことも知っている。
世界中できっと、僕だけがきっと……、
でも「知っている」だけ――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「もしもし?クオ?」
君が僕にじゃなくて、隣のモノに話していたのは、すぐに気づいた。
(僕に話していた訳じゃなかったんだ…。)
どうやら、これがお役目らしい。
でも僕には十分な日々だった。
少し体も汚れてきた。
だけど、まだ変わらずに一緒にいた。
どんな時でもいつも傍にいた。
揺れる瞳は君のことを見ていた。
誰かに向けた、きれいな笑顔も僕は知っている。
君が好きな人だって知っている。
世界中できっと、僕だけがきっと……、
でも「知っている」だけ――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
振り返れば、わずかな月日。
僕の鎖はある日、切れた。
「あ、切れちゃった…。」
君が少し困った顔をした。
僕は暗い箱に沈んでいった。
それが最期に見た僕の全て。
(そんな顔しないで…。)
1人泣いていた君を知っている。
君が悪くないことも知っている。
世界中できっと、僕だけがきっと……、
でも「知っている」だけ――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
もしも僕を見て「悲しみ」というなら、それはきっとあなたが人だから。
このため生まれて、これ以上もなく……
「さよなら」も言えない。
(バイバイ。君と過ごした月日を忘れない。君の笑った顔も泣いた顔も、全部忘れない。大好きだよ。)
(さよなら)
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