あたしの腕にぶら下がって。
紙袋が揺れる。
気まぐれ小説・ろく(似合わない事はするもんじゃないと痛感させられたよホント)
夕暮れの帰り道。
今日は珍しく冬らしい。
寒い。
かじかんだ手に息を掛ける。
一瞬だけ温もりを感じて、またすぐに冷えた。
「はぁっ」
「何お前溜め息してんの」
「してないです~」
アイツの腕にぶら下がってるのは紙袋。
中身は言うまでもない、乙女の気持ちが一杯詰まった甘いお菓子が入ってるのだろう。
「手、あっためてただけ」
「お前な、手袋しろよ手袋」
「あるけど…穴あいてるし」
「買え」
「金無いし」
チラとアイツの手を見る。
どうしても視線が行ってしまうあの紙袋の中には一体いくつの『想い』が入っているのだろう。
てか、アンタもしてないじゃん、手袋。
「はぁっ」
「オイオイまたかよ」
「だから違…」
「ん」
差し出された大きな掌を見つめる。
「……何?」
「手、」
「手…?は?」
もしかして「寒そうだから手ぇ繋いでやる」とかそんなベタでクサイ事言う気じゃないでしょうね止めてよねアンタのせいで頭がパンクするわバカ!
「いいよ何か荷物一杯持ってるみたいだし」
「何言ってんのお前。手だよ、手に持ってるソレ」
「は?……コレ」
「そうそう、それ、何?」
何って聞くか聞いちゃいますかだからと言ってホントの事なんて言えるかァァァ何よりアレだ恥ずかしい!!
「……チョコ」
「はっはーん、俺にか★」
「違ッ!!これ貰ったやつ…」
「ふーん?あっれ、でもコレさカードに書いてある名前俺んだけど?…まさか、俺宛てのチョコをお前盗ったんじゃ…!」
「違うって!これは…」
「それは?」
「………」
うっわ腹立つわコイツ何もかもお見通しだ!みたいな自信に溢れつつ悪趣味なニヤけ顔してからに。
あー腹立つわ。熱い。
「ま、兎に角それは俺宛てな訳ですし、こっちに渡して貰おうか?」
「…~~ッ」
渋々アイツに小さな紙袋を渡す。アイツは「毎度ありィ」なんて言いながら白い大きな紙袋を広げて中に入れた。てか何だ毎度ありィて。意味分からん。
……あ、
「ん?どしたよ」
「なんでもない」
「あ、分かったお前さっき手握られるかと思ったんだろ?ププッ」
「思ってないし」
「へーぇ?なんならお前、握ってやろうか?手?」
「するな!んでもって笑うな!」
「笑ってないけどゥ、べっつにィ?」
「…むかつく!」
※ジャージだったんだ、中身。
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