[6月6日(月) モモサイド]

 外はしとしとと雨が降っています。

 こういうときは部屋でテレビを見るに限ります。最近のドラマは感情の勉強によいとリンちゃんに教わりました。

 え?家事はどうしたのかって?

 マスターは片付けが得意なので、私は特にすることがないんです(泣)

 あ、そうそう。雨で洗濯物が乾かなくて「イライラする」という感情を習得しました。

 なるほど、これはイライラせずにはいられませんね(苦笑)

 ドラマの中では、男の人が女の人の前でもじもじして何か言いたげです。

 その様子を見て、女の人はイライラしています。

 「言いたいことははっきり言って!」と怒っています。私も同感です。

 男の人は、「お前のこと、す……」で止まったまま。

 他人に向かって「好き」と言うことは、そんなに難しいことでしょうか?


 一昨日、マスターと一緒に買物に行った帰り道、尋ねてみたんです。

 「マスターは私の瞳(め)を見て『好き』と言えますか?」って。

 マスターは笑って、「ばかだな、大好きに決まってるだろ?」と言ってくれました。


 こうも簡単なことをどうしてできないのか不思議でたまりません。

 メールでリンちゃんに訊いてみましたけど、教えてはくれませんでした。

 そういえばリンちゃんもマスターのことを「好き」と言ってましたよね。

 やはり「兄妹」という間柄は特別なのでしょうか。

[同刻 ???]

?1「ふむ、近い。どうやらこの辺のようじゃな。」

?2「あのさ、おじいちゃん。今日は私が代休だからって私まで来る必要は……」

?1「いや、お前自身に関係することじゃから、そういうわけにはいかん。」

?2「じゃあ昨日でもよかったんじゃ……」

?1「思い立ったが吉日。これは研究の基本じゃ。」

?2(あーあ、今日は朝から見たいドラマがあったのに。雨の中どーしてこんな遠出をしなきゃいけないのかしら。)

[6月6日(月) モモサイド]

 さて、と。ドラマも終わったことですし、少し動くことにしましょう。

 あ、そういえば一昨日は金平糖を買いそびれたんでした。

 あ~!今、ロボットなのに忘れることなんてないって思いましたね?

 私の基は人間ですから、たまに物忘れくらいします。

 銀行の暗証番号とかは忘れないんですけどね。

 基は人間、か。

 バックアップ時(人間で言う睡眠中の記憶整理)に、たまに見える女性。

 はっきり見えた事はありませんが、きっとあの方が私の基なのでしょうね。

 雨も小降りになってきました。散歩がてら、買物に行きましょう。


 防水加工はしてありますが、機械の性質と言いますか、水を嫌うので傘は必須アイテムです。

 メイドロボが作れる時代なのに、足元が無防備な傘は進化しないなんて、少し不思議ですよね。

 近所の小学生が鼻歌を歌いながらスキップしているのを見かけろこともしばしばですが、あんなにはしゃいでいるのは理解ができません。

 農家の方なら気持ちがわかるのですが。

 そんなことを考えているうちに、モールへと着いてしまいました。

 金平糖はお菓子売り場、手前から八列目、二メートル歩いて右手の、下から二番目でしたね。


 そうそう、私が金平糖にこだわる理由を説明していませんでした。

 私は充電式なので食事はほぼ無意味なんですけど、料理の味見なんかのために味覚が付いているんです。

 その味覚で初めて「おいしい」と思った食べ物が、この金平糖なんです。

 しかもこの百瀬印の金平糖、ほんのり桃味がして美味しいんですよ♪

[同刻 ???]

?1「お、ショッピングモールじゃ。そういえば単二電池がなかった気がするのう。買ってくるぞい。」

?2「え?私も行きたい。」

?1「電池しか買わんから、ちょっとそこで待ってておくれ。いざとなったら携帯にな。」

?2「あ、ちょっと……行っちゃった。私も見て回りたいのに。」

[6月6日(月) モモサイド モール前]

 あら、雨は止んでしまいました。

 雨上がりっていい気分ですね。傘を差さなくて済むんですから。

 植え込みの紫陽花だって雨で濡れて輝いています。

 雲の動きが早いです。その雲間から、光が一筋……


 その光が照らした先にいる人物は……

モ・?2「「あら?私がもう一人……」」


  雨上がり 水たまり
  
  あの傘に 水色が跳ねて

  吹き抜ける 白い風

  それとなく揺れる黒い髪


  そうなの 夢を見た あなたと


  急展開から直角降 左胸はじけて

  空の青から 言葉がグルグル

  全回転して右手に伝わる何かを突き抜けて飛んでった

  そんな夢を見た

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

モモの木成長日記:二曲目「なつのみぞれ」1/2

二話目。
今回もつなぎとしてのお話ですが、やや長いので二回に分けます。

今回もあらかじめ。
この作品は「なつのみぞれ」(http://piapro.jp/t/eImv)のリスペクトです。曲との関係はまったくありません。

でわ、お楽しみください。

閲覧数:124

投稿日:2012/03/26 16:54:02

文字数:1,988文字

カテゴリ:小説

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