ミュージアム、二篇
「ミュージアム」
A-B-C-A-C'
ぴたり 僕は鏡の上に 足をつけては
大理石は 冷たくなりきれない 氷河
ああ 飾るには まだ 早いかな
忘れたくない感動が もう沢山あるのにな
誰もいないミュージアムを歩く
ここは全部 無題ばかりのパレード
誰もいないミュージアムを歩く
君の顔も 無題ばかりのパレード
ぴたり 夜と朝とのあいだに 体を滑らせ
落ちるあいだ 繰り返す感覚と ゆめみる
誰もいないミュージアムを歩く
ここは全部 無題ばかりのパレード
名前をつけたものから 陽だまりに残る
願わくは 無題に還らんことを
「無題」
A-A'-B-S-C
明日も雨ですか
重くなる 三時のグラスと
帰ることが出来ない夢
こんななら 醒めていたいと
ドアを閉じたあと すり抜ける微かな光に
この孤独を初めて見た
無題に還れ
あちらの幸せにあるものは
名付けられては 動けない
歩いたあとに 道ができるのは
いつまでだったろうか
死んだあとに名前が残るには
何をすればいいんだろうか
足元から離れない影と
今まで吸った酸素の量とが
名前より 輝いていますように
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