暖かな陽射しと共に咲いた見事な桜はとっくに散っていた。
今は暑い陽射しが俺たちを照りつける。
そして、大きな向日葵が太陽に向かって大きく伸びる。

*


「…大丈夫かな」

自分の部屋で涼んでいた俺は、容赦なくじりじりと照りつける太陽を見てふいに彼女のことを思い出す。

彼女をいつもの教室で見つけ、後ろから抱きつく。
小さな叫び声のようなものが聞こえて彼女が振り向いた。

「白狐さん」
「凜蝶ちゃん、熱中症なっ てない?水分ちゃんと摂 ってる?何なら俺の部屋 にでも「あんたの部屋は 涼しいもんねぇー!」」

思いっきり蒼空ちゃんに遮られた。
目の前の彼女は目を丸くしている。頭上にクエスチョンマークが並んでいる感じだ。
そのとき、後ろの方で声がした。

「白狐くんは相変わらずじ ゃねぇー…」


見ると、詞ちゃんが顔を微妙に赤らめて溜め息をついていた。


「詞ちゃんは何考えてるの ?」


笑いかけると詞ちゃんは「何も考えてないっ!顔洗ってくるっ」と教室を走って出ていった。


「相変わらず面白いなぁ、 詞ちゃんは」


駆けていく彼女を見ていると、左から心配している声が聞こえた。


「詞さん…、大丈夫でしょ うか…。まさか、熱中症 に…」


かなり心配しているようだ。
眉を下げ、どうしましょうと呟いている。
理由が大体分かっている俺にはそれがおかしくて、思わず笑いそうになったのを必死にこらえ、大丈夫だよ、と言った。


「それより、凜蝶ちゃん。 外に向日葵が咲いてるん だけど見に行かない?」

詞ちゃんのことを“それより”と言ってしまったのは心の中でお詫びと訂正をしておこう。きっと彼女は許してくれる、はず。


向日葵を見に行くことになって、俺と凜蝶ちゃんは手をつないで外に出た。
向日葵を目にしてすぐ、凜蝶ちゃんはすぐにわぁ、と感動の声をあげた。


「━━すごい、高い…。す ごく綺麗です…」


今日は目の調子は良いらしく、すごく喜んだ。


「向日葵って、成長結構早 いんだってね。すぐ大き くなる」
「すぐ追い越されちゃいま すよね、特にこの向日葵 は岬先生が植えたものだ から…」


太陽に向かって大きく伸び、堂々と上を向く向日葵がとても偉大なものに見えた。


「…向日葵って、焦ってる んでしょうか…」


向日葵をずっと見ていると突然、凜蝶ちゃんは呟くように言い、そして続けてこう言った。


「焦らなくても…、ゆっく り成長していけばいいと 思います」


その言葉は今の俺たちにぴったりなのではないのか、そう思った。


「そうだよね。んじゃあ、 奏暫さんと大河さんを説 得するのも焦んなくてい いのか…。うん、そうし よう」



うんうんと頷く俺に凜蝶ちゃんは混乱に陥った。


「え?え、えぇ?!白狐さん っ?!」


顔を真っ赤にして凜蝶ちゃんは混乱し続ける。
その姿さえも愛しくて、抱きしめたくなる━━…


太陽が照りつける夏空の中、俺たちはゆっくりのんびりと成長する。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

僕と彼女と向日葵と

あたしと友達のオリキャラ小説です。
読み方を紹介します。
◇白狐→びゃっこ
◇凛蝶→りりちよ
◇詞 →ことのは
◇蒼空→そら

            です。
感想など下さると嬉しいですっ♪

閲覧数:106

投稿日:2010/08/20 13:41:17

文字数:1,294文字

カテゴリ:小説

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