誰だって一度は夢見ること。
「メイドが欲しい」
俺だってその一人。近年、自作メイドロボが流行っているのを見て、俺もそう思うようになった。
以前は大学の一人暮らしで楽しかった気もしたが、次第に暇さえあればパソコンの前に座る、いわば廃人と化しかけていた。
そんな時、俺は友人のメイドロボに会った。友人曰く、「人生変わった」。
凄く誇らしげだった。
で、俺もほしいなぁ、って思ったんだ。
だって、かわいかったんだもん。
******
大学二年の春休み。
ここで俺はバイト代をすべてつぎ込んでパーツを買ってきた。
ネットを見ながら組み立てていく。俺は理工系ではないので分からないことが多く、もっぱら例の友人に作ってもらった。
ちなみに、最近のパーツってのはすごかった。関節部は人間のそれっぽかったし、髪もサラサラでいかにもって感じ。人工皮膚・筋肉・脂肪ももちろんのこと。
春休み中に、本体と言うべきものは完成した。あとは性格・声のプログラムの導入である。
そもそも、俺は「他人と同じ」というのが嫌いだ。動画や曲は誰も知らなそうなのを推すし、持ち物も珍しいものが入手できたらそれを使う。
俺はネットで性格プログラムダウンロードのランキングページで順位の低い方から検索をかけ、そこから紹介サイトへとび、そこの気にいったやつにすることにした。
そこで俺は、一瞬で心を撃ち抜かれた性格プログラムを見つけた。
『桃音モモ』
これしかない、と目に入った瞬間わかった。説明文を読んで、さらに確信した。
このデータ、完成は最近らしく、しかも試作であるからかフリーソフトだった。
「はじめまして、マスター」
5月22日。それが彼女の誕生日。
それから俺の日常は、今までと全く異なるものになる。
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