錠剤の量が増えていた。それは意識的にではなく、無意識に。感情的に。絶望的に。
 錠剤が無くなって医者に行ったら、私では対処出来ないと言われた。医者とは、医者とは、そういうものを何とかする仕事では無いのだろうか。酷く、至極、絶望した。
 この前行った映画館で映画を見た。映画を見るといい、という医者からの最後のアドバイスだった。最後に一週間分プラスアルファの錠剤と紹介状を渡された。紹介状は東京にある大手病院への紹介状で、そこへ向かうには新幹線で二時間はかかる。
 要はさじを投げたということだった。相手が投げたというならば、こちらも投げさせてもらうことにしよう。
 ふと気付くと、映画のエンドロールが流れていた。どういうことだろう。中盤くらいまでしか見た記憶が無い。時間が飛んだということも考えられるけれど、現実的な考えをすれば眠っていた、ということになるのだと思う。
 勿体無いことをした、ということと同時に眠った記憶が無い、という二つの考えが鬩ぎ合う。
 映画館を出ると、雨が降っていた。
 傘なんて当然持ち合わせていなかったから、私はパーカーの帽子を被る。
 と、そのまま外に出ようと思ったちょうどその時だった。私の隣に男女の二人組がやってきていた。その二人組は映画のことやこれからどうするかといった他愛もない話をしながら持っていた一本の傘を差して相合傘にして帰っていった。
 その間、私には目もくれず、無頓着に去っていった。
 その光景は、前に映画館でデートした私と彼のようにも思えた。
 そんな回想を思い描いただけで、救われるわけなど無い。
 左手には未練がましく、まだ指輪がつけられていた。
 未練だって、私も解っている。
 それくらい私にも解っている。
 何も生み出さないって、私にも解っている。
 誰も喜ばないって、私にも解っている。
 けれど、どうすればいいのか、今の私には解らない。どうやっていけばいいのか。どうしていけばいいのか。どうやって彼のことを忘れてしまえばいいのか。
 消えたことに気付いているなら、最初から――悲しみたくなかった。


 ◇◇◇


 駅のホームにて。
 私は電車を待っていた。
 列の一番前で電車を待っていた。
 声をかけられたような気がした。
 目を瞑って――声をかける。

「ねえ」

 もし、あなたがまだ私に好意を持っているならば――その執着を、見せてほしかった。
 でも残念だよ。私はそれを一度も見ることが出来ない。疲れちゃったから。
 さようなら、私の大好きだった人。
 そうして、私は次に進む。大きく前へ一歩足を進めていくのだった。
 壊れやすい心なら、もう要らない。
 私は前を向いて、進むしかなかった。
 眩しい二つの光が、進む私を照らす。





 そして私の意識は――そこで途絶えた。

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【二次創作】フラジール 2

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投稿日:2016/11/13 17:41:06

文字数:1,180文字

カテゴリ:小説

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