「お父さんお父さん」
「ん?どうした?」
「あのね、夢を見たの」
月曜の朝、娘が私に話しかけてくる。
怖かったのか、まだ着替えていない私のパジャマの袖口を握ったままだ。
「へぇ。どんな夢だったの?」
「あのね、凄く遠いところへお使い頼まれたの。それでね、私一人で行くことになったの」
「ふむふむ」
「途中歩けなくなったり、道がわからなくなっちゃったりしたの」
「それが怖かったの?」
「ううん。怖かったのは、お父さん電話で呼んでもお返事してくれなかったからなの……」
娘もそろそろ大きくなってきたとは言え、まだまだ子供だ。
ちょっとしたことが凄く怖いのだろう。そこが可愛いところでもあるのだが
「そっか、それはお父さんが悪かったね」
「でもねでもね、ちゃんとお使い頑張ったよ!」
「そっか、ちゃんと出来たんだ。エラいエラい」
そう言って頭をグリグリと撫でる。普段はこの撫で方は嫌がるのだが、
今日に限ってはくすぐったそうにしているだけだ。
「でね、帰ってきたら、みんなが『おかえりなさい!』って言ってくれたの!
 スゴク嬉しかった!」
「そうかぁ、それはとっても良かったね」
「うん!」
娘の顔が晴れやかになる。後は妻の仕事かな。
私も今日は一日良い気分で過ごせそうだ。

あれ、そう言えば昨日の晩……

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

おかえりなさい。

せめて最後は幸せに。

閲覧数:28

投稿日:2010/06/13 21:10:46

文字数:551文字

カテゴリ:その他

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