何となく。
理由が明瞭でないときに良く使う言葉だ。
俺はいつものように家庭教師の仕事を終えて家路に着いていた。
もうすっかり夏の気配は消えた肌寒い気温を服越しに感じながら歩く。

何となく、最近何かがおかしい。

こうもはっきりしない気持ちはなんだか気味が悪いものだ。
ただ、思い出すのは先日の自分の誕生日。こんな俺に多くの人が贈り物をくれたし、悪くはない日だった。
その時に貰ったケーキが、何となく脳裏に焼きついている。
確かにあれは美味だった。
だが、だからといって記憶に残っているわけではないのだ。

では何故?

その先が空白。
何も無い。だから俺はただ何となくの違和感しか感じることしか出来ない。

「なんなんだ、一体…」

この頃そんなもやもやが不意に出てきては俺を悩ませる。
あのブラウンの柔らかそうな髪を揺らして、あの日彼女は自分にケーキと幾つかの品を渡してくれた。
ケーキを食べたあと、俺は何故追いかけようと思ったのだろうか。
もとよりそんなに行動的ではない己の性格を知っているからこその疑問に知らずの内に眉間に皺が寄る。

「今日は随分遅くまで教えてたんだな」

ドアを開ければどうやらちょうど風呂から上がったらしいマクがジーンズだけの姿で頭を拭いていた。
適当に相槌を打って、リビングに入ればソファの隣に鞄をおく。
続いてリビングに入ってきたマクは、俺の脇を通りソファに腰を下ろした。

「どうしたよ?」
「ああ、いや、何でもない」
「ふーん。つかさ、クルリがなんか遊びに来たいとかなんとか言ってたけど」
「クルリ君が?構わないが…」
「カナデも来るってよ。」
「…っ、」
「よかったな、お前ほうれん草のケーキ気に入って…って何処行くんだよ?」
「少し疲れた、寝る」

ぐるぐるぐるぐる。
沢山の何となくが渦巻いて繋がっては離れていく。
何となく、胸がもやもやする。
何となく、違和感を感じる。
何となく、彼女を思い出す。

何となく―――

きりの無い何となくに髪を掻き乱して、ベッドに乱雑に腰掛けた。
ため息と同時に見上げた天井には、表情の無い蛍光灯。

まるで、自分のようだと、何となく――――思った。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります

何となくの理由

由希ちゃんに影響されて書いて見た。
文才が欲しい…orz

少しカナデちゃんが気になりだしたけど気づいてないアビスの図←
彼は恋とかしたことないんだ!

閲覧数:90

投稿日:2009/09/23 21:40:22

文字数:920文字

カテゴリ:小説

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  • チャバ

    チャバ

    ご意見・ご感想

    いえいえ由希ちゃんに比べたらこんなのはあれさ!
    ごみさ!←

    進展@ゆっくうり、ほのぼのやっていきたいね☆

    マク視点!楽しみにしてるよ!^^

    2009/09/28 20:46:16

  • 由希@時間がなければ余裕もない

    文才、あるじゃないですかっ!私なんかより全然っ!!汗

    うわ、うわ、まさかの進展に動機が…!
    自分の気持ちがわからないー、とぐるぐるするアビスさんがとても愛おしいよう。
    めっちゃめちゃ嬉しい!!
    またいつか、暇で暇でしょうがなくて呼吸くらいしかすれことがないときなんかに書いてるくれたら泣いて喜b(ry

    良ければ私もまた書かせてね^^
    今度はマクさん視点とか

    2009/09/24 03:11:49

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