すっきりしない曇り空。
「・・・なぁ、アカイト」
「何だ、バン?」
俺が本を読んでいると、バンが声をかけてくる。
「何で、空は曇ると思うか?」
「え・・・、それは」
当然のように答えようとしたが、最後まで言葉にならなかった。・・・そういえば、詳しくは知らないことに気づく。
「・・・何でなんだ?」
素直に尋ね返すと、
「私は気象学専門じゃないから、これはあくまで推論なんだが、空が曇るのは恐らく雲のせいだ」
「雲?空に浮かぶ雲?」
「そうだ。・・・浮かぶというより、漂い消えるといった方が正しいかもな。それで、その雲がどうやって作られるか、分かるか?」
「さあ?」
バンでさえも知らないことを、何で俺が知ってるんだという風に俺は首を斜めに傾げる。
「・・・これは結構知られていることなんだが」
「え、そうなの?」
それでもとぼける俺に、バンは呆れたように笑顔を零した。・・・やべえ、この笑顔も可愛い。ちなみに一番の表情は・・・内緒だ。
「雲は小さな氷や水の粒子、つまり粒が集まって作られている。・・・ここまで分かるか?」
「それぐらい俺だって」
「あはは、可愛いな」
俺の拗ねた物言いにバンがにやりとして言う。・・・うっさい、お前も十分可愛いぞ、バン。
「それらの粒たちを、・・・何て言ったらいいのかな。それらの粒たちの元が、水蒸気なんだ」
「へー」
「水蒸気は気温が上がるほど空気の中に含まれるんだが、気温が下がると空気の中に含まれる量が減るんだ。分かるな?アカイト」
「なんとなく」
俺は、マスターが昔使っていた理科の教科書に書かれていたなとか思いながら返事する。
「それでも、雲はある人の力がないと作られない。それが何だか分かるか?」
「何、ある人って?」
俺は少し吹きだしそうになりながらも、聞き返す。
「ある人・・・じゃないな。あるものかな」
「あるもの?」
「ちなみに、2つあるな」
「へ?2つもあるのか・・・って、あっ」
俺は閃いて、
「もしかして空気中の大半を占める、小さなちりかっ!?」
「よく分かったな。アカイト」
バンが俺の解答に拍手する。
「だが、ちりはあとから出てくる。その前にもう1つ、ある風が関係してくるんだ。分かるか?」
「ある風?・・・ちなみに、気分が悪くなって病院行ったら薬もらえるあれじゃないだろうな?」
「それは風邪だ」
俺の言葉に突っ込む言葉は短い。・・・バンは突っ込み役に向いてないなと思った。
「あー、じゃあ、温暖何とかってやつは、違うのか?」
「それは温暖前線だ」
「そうか、じゃあ・・・」
「寒冷前線じゃないぞ」
俺の言おうとした言葉を、先回りして言うバン。
「むー・・・」
俺はうなって考えたけど、それ以外に思い浮かぶ言葉が無かった。
「分からないなら説明いくぞ」
「分かったよ。それで、結局答えは何だよ?バン」
お手上げというように言った俺に、バンは一言、
「上昇気流だ」
と、言った。
「あー、そっか。確か下降気流とかとタッグ組んでるやつだよな」
「・・・下降気流の名前は出てきたのに、何で上昇気流は分からない?」
「だって、俺、下降気流の方が好きだもん」
「・・・・・・・・」
俺の言葉に、バンは何も言えないぐらい呆れ返っている。・・・この表情のバンも、なかなか素敵だなと思った。
「・・・それで、その上昇気流がどうしたって?」
「ああ、それでだな」
ここから再びバンの講義が続く。
「その上昇気流が、水蒸気を含む空気を、地上から上空へと運ぶんだが、・・・・アカイト、私がさっき言った、水蒸気の性質覚えているか?」
「・・・確か、気温が上がるほど空気の中に含まれて、気温が下がると空気の中に含まれる量が減る。・・・これでいいか?」
「そうだ。・・・さすが、私の婚約者なだけあるな」
「まあな」
少し照れくさくなって、目を逸らす俺。
「それで、地上から上空に運ばれた空気の中からこれ以上含みきれない水蒸気が、外に出てくる。これが、さっきアカイトが言った小さなちりと混じって、そうして雲になるんだ」
「へー」
俺はただただ感嘆するしかない。
「そうやって、少しずつ雲が出来ればいいが、この時期はそうもいかなくてな。厄介な季節だ」
そう言って、ため息をつくバン。
「・・・別に、いいんじゃないか?俺がいるんだし」
「・・・・・アカイト」
俺の言葉に、少し驚いたようにしつつも、
「そうだな。アカイトがいれば、どんな天気もどうでもよくなりそうだ」
と、なんだか嬉しそうに言ったのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【番外編】 アカイトとバンの2人っきりと雲の出来方の講義をやっぱり2人っきりで 【亜種コラボ小説】

こんにちは、何書こうか迷っていたらそういえば今日も曇りだよなーと思って、そこから雲の出来方をネタに書いてしまったもごもご犬ですこんばんは!
・・・ネタと時間さえあれば何でも書けることだけが唯一のとりえなので←
まぁ、ネタも時間もありませんが><

次回は、どんな話とかどんな路線の話書こうか全く決めていませんが、予想外の話が出てきても、普通に見てくれると嬉しいです!
お楽しみに^^

閲覧数:64

投稿日:2010/07/04 15:46:34

文字数:1,869文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました