煤けた色の本を手に取った
隣にはリリーの香を詰めた缶
拙い文章の終わり
震える字で『眠たい』とだけ書き足されていた
「世界の終わりが欲しい」
あなたは小さく言った
僕が消えれば それを叶えられるなんて
あの縹色の花に触れたのはもういつのことだったか
思い出せない
『サルヴァドールの教会で祈った』と
それだけが耳にこびりついた
ただ、息が苦しい
死にたいだけだ、と知って
あなたは何も 止めようとはしなかった
「世界の終わりが欲しい」
あなたはいつもそう言う
僕が消えればそれを叶えられるなんて
自惚れていると、思う。
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