揺らぐ景色 陽射しの中 眩暈覚え立ち尽くした
彼が見てた未来さえ彼の手にはないのだと
彼が握るナイフからは肉を抉る感触が
その時さえ受け入れた 彼女の顔 浮かんでくる
理由などありはしない ただ声が聞こえていた
汚れた手が温かい 消えはしないあの夜
帰れない道の途中 穿たれた虚ろな孔
うすら寒い現実に頬の肉が震えた
彼はいつか数学者になれるものと信じてた
無慈悲なほど美しい数式を愛してた
レールの上 踏み外して歩くなんて出来はしない
ただ線路は信じてた終点には導かない
不条理な解答など求めてた答えじゃない
仕組まれてた物語 操られた道化師
歯車の耳障りな回る音 軋みながら
後悔など意味はない 笑いながら呟く
白い月が笑う真夜中
振り向いた手を翳し 揺らいだ光
紅く染まる胸の花びら
抱きとめたその腕は優しく甘い
残された時間はもう静寂に包まれてく
翳す手にはジャスミンの淡く香る残り香
目を伏せて幼い日を想いだすあの陽射しは
あんなにも暖かい絵空事を描いた
碧い部屋で伏せた瞼の
裏側で甦る崩れた体
黒く溶けた影は幻
手を伸ばす その慈悲を求めるように
白い月が笑う真夜中
振り向いたその顔は微笑み浮かべ
紅く染まる胸の花びら
唇が震えてた最後の言葉
00:00 / 05:05
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想