「そうすれば・・・」
「え、何だよバン。・・・言っとくけど、あの2人は見習うなよ?あの2人は毒持ってるからな」
何やら難しい顔をして考え込むバンに、俺は忠告する。
「・・・さて、なじませた後は、クリームのボールに戻し入れて、よく混ぜます」
気を取り戻したようにジミが言って、早速実行する。
「私、手伝いましょうか?」
「いえ、いいですよ。これぐらいなら、そんなに混ぜなくて大丈夫です」
ジミはやんわりと、モコの提案を断る。
「・・・目、回る」
ジミの隣にいて、作業を見守っていたレトは呟く。
「うー!ぐるぐるぐるぐるまわるまわるーー!!」
両手を広げて走り回りながら、ウサは楽しそうにはしゃぐ。
「なんか、可愛いな、ウサ」
「ロリコンなアカイトさんには、確かに可愛いと思いますよねー、やっぱり」
俺の言葉にモコは一言、言った。
「・・・・ちょ、モコ」
「何ですか、アカイトさん?」
「これまで、モコに何か言われてもそんなに追及しなかった。・・・何故だか分かるか?」
「・・・分かりませんけど」
俺は、ちらりとモコの頬を見る。若干、赤に近い色に染まっていた。俺の予想通りだった。
「俺が言えばいいんだけど、なんていうかな。俺、ふたまたしてるからさ、これ以上は増やせないっていうかさ。・・・・」
俺は言葉を切り、モコを見つめる。
「・・・・アカイトさん」
モコは口を開く。
「私、アカイトさんのこと好きです。大好きです。愛して・・・いるかは、まだ分からないんですけど。・・・でも」
「・・・」
「この恋は、片側の恋だったんです。この恋の結末は、すれ違いに終わりです。・・・ジミさんから聞きました」
グルトが混ぜていたプレーンヨーグルトを少しずつ加えて、ゴムべらで手早く混ぜていたジミは目を丸くして、モコを見る。
「モコさん、そんなこと今ここで話しちゃだめですよ。そんなこと言っても、お互いに悪影響が残るだけです」
ジミらしくない強い口調に、モコは一瞬怯むも、
「・・・・・いいんです、ジミさん。もう、心の中に抱えて、泣くのは、辛い・・・ですから」
そう言って、淡く微笑むモコ。・・・何で、女の子ってこういう時に、とっても綺麗な表情するのだろう?
「・・・・・・・・・・・分かりました」
ジミは頷いて、再び作業に戻る。今度は、器に流し入れてラップをし、冷蔵庫に入れる。
「片側の恋・・・一方通行の原理か?」
俺は遠い昔に、マスターが言っていたことを思い出して言う。
「んで、一方通行の原理が重なると、すれ違いの原理に変化するんだな?」
その当時には適当に聞き流していたが、不思議と思い出せる。何だろう、リフレインの定理かな。
「え・・・、それを何で」
「俺のマスターに、ずっと前に聞いた。マスターは、そういう論理とかが大好きでな。中でも、時間論っていうのがお気に入りらしい。・・・モコ、今っていうのは、何だと思う?」
「今・・・ですか?」
「そうだ。過去と未来の境界線の今。今って、何だ?」
「・・・・うーん」
モコは考え始める。果たして、モコに分かるだろうか?論文でさえも、はっきりと定義しているものは少ない。なんてったって、相当の難問だからなー。・・・ちなみに、マスターは『連続的に変化するもの』って、言ってるけど、どうやら本の引用みたいだ。残念。
「今は、今です。一瞬一瞬の時間が今なんです」
「あー、なるほど。だけど、それだとさ、1秒が今ってことになるぜ?」
「だから、1秒よりも・・・・・・・」
モコは何かに気づいたらしく、口を閉じる。
「分からないよな?・・・過去と未来が」
「1秒はずっといけば60、120と積み重なりますが、1秒が今とすると、確かに分かりませんね」
「そうだな。60、120秒も、今になるからな」
俺は少し嬉しくなった。今度、マスターに話そうっと。
「とすると、今っていうのは、常に・・・・」
そこで何かに気づいて、
「変化してるんですね!?」
モコは嬉しそうに言った。・・・・おお、マスターが言ってたことと似ている。すごいなぁ、モコ。
「そうだ、モコ。俺のマスターも、モコと似ていることを言ってたぜ」
「ほええ・・・」
俺の言葉に、目を丸くさせるモコ。こんなモコも、可愛いなぁ。
「さてと。ジミ、あとどれぐらいで食べられるんだ?」
「あと・・・」
ジミは時計を見つめてから、
「2時間30分です」
と、返事してくれた。・・・って、2時間30分!?
「まだまだじゃねーか・・・」
俺は1人ごちる。その間、何をやればいいんだよ。
「あの、アカイトさん」
「何だ?モコ」
「できれば、他にも様々な論理とか教えてもらえませんか?」
何故かwktkした表情で俺を見つめるモコ。・・・あれ、さっきまではつっけんどんな態度じゃなかったっけ?モコ。

・・・まぁ、いいか。

俺は約2時間30分に渡りモコに、実にたくさんの多岐に広がる論理を、俺の知っている限り全部の論理を話したのだった。

そして時間は過ぎ、いよいよその時がやって来た・・・はずだった。
「みんなで味見・・・したいのですが。・・・あの、今度色んな人がここへ来るので、これはその時までお預けです」
「えーーーーーーーー」
その場にいる、ほぼ全員が不満そうな顔をする。もちろん、俺も。
「俺、食べるの楽しみにして、一生懸命話したのになー・・・」
「しょうがないですよ、アカイトさん」
ぐだーっとする俺に、モコもぐだーっとして隣で言う。
「楽しそうだねー」
「うるさい」
茶々だかよく分からない言葉を入れてくるニガイトを、とりあえず黙らせる俺。

外は暑くて、どこまでも青い空が広がっていたのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【番外編・後編】 ヨーグルトのムースはグルトとニガイトの2人3脚? 【亜種コラボ小説】

こんにちは、もごもご犬ですこんばんは!
作品投稿久々で、忘れられてないかな?
今回はパフェ対決・・・の、その前に放置しちゃってた番外編の後編です!
何か最後らへんほとんどアカイトとモコちゃんしか出てきてませんが、番外編ということで大目に見てくれると嬉しいです!><

次回も、番外編です!本編、いつになったら完成するのか・・・。

閲覧数:65

投稿日:2010/07/28 10:36:01

文字数:2,339文字

カテゴリ:小説

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