Lullaby
 終焉の合図



「がくぽ、アリスがこの城に来たって本当?」

 ミクは誰もいない病室に一人いた。

「もちろん、本当でござるよ。ミク殿。」

 幻聴が言う。

「そう、なら出て行くように言ってくれない?」

 素っ気なく、ミクは言う。周りからすれば大きな独り言を呟いているようにしか見えない。

「それは拙者には無理な話でござる。」

「どうして?」

「どうして、って申されても…。」

 幻聴は言うのを戸惑う。それから黙りこくると白を切った。


《アリス(レンカ)はこの城(病院)の住人(患者)ですから》




「ミクっ!無事か?!レンカに何かされてないか?」

 バンッと扉が強く叩かれる。ミクオだ。右腕は血に染まっていて生々しく表面を切られた後がある。

「お兄ちゃん!」

 妹が起きていたことに喜ぶや否や胸をなで下ろす。

「よかった…。」

「お兄ちゃん、腕…。」

 ミクが血だらけの腕を見て言う。ミクオはすかさず隠した。

「平気だよこれくらい。」

 ミクオの後ろから人が現れる。ハクだ。ハクが着ている白いナース服が血で赤黒く染まっている。

「早く行きましょう!」

「えっと、どこへ?」

 話の読めないミク。

『今すぐここから出るの!』



 ミクはハクに抱かれていた。

「あの、重くないですか?あたし。」

 急かす兄は腕を抱えるようにしながら走っている。


《ありがとう、がくぽ。》

 ミクは心の中でそう思った。



「ユメって何?ホントウって何?」

 レンカはどこから調達してきたのか包丁ぐらいの大きさのナイフを持っていた。フラフラと千鳥足でゆっくりと進む。

「ねぇ、誰か教えてよ!“あたし”はどこにいるの?」

 その答えを言うモノはいない…。


 彼女のいる病院の入り口付近は死体の道で埋まっているのだ。その中にはカメラを持っていたモノ、マイクを持っていたモノ。それにテトもその中にいた。


四番目アリスは双子の子
好奇心から不思議の国

いろんな扉をくぐり抜けてついさっきやってきたばかり

気の強い姉と賢い弟

一番アリスに近かったけど


『アリス連続殺人事件に終止符が打たれました。』

 あの夢のような地獄の日々から数ヶ月、ハクはテレビのチャンネルをつけた。

『容疑者の鏡音レンカ氏が◇◇病院の入り口付近に倒れているところを警察が発見。そのまま護送しましたが既に死亡していたそうです。』

 “なつかしいなぁ。”そう思いながらコーヒーを飲む。

《ハクお姉ちゃん、あたし先に逝くね。》

 数ヶ月前、あの子が最後に言った言葉だ。頭を抱え苦しそうにしながら笑っていたことを思い出す。

 ミクオたちは元気にしているのだろうか、ハクはふと気になった。だから彼女は手紙を書く。




  彼らはこの事件の生存者だ。


二人の夢は覚めないまま

不思議の国をさ迷った。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります

人柱アリス 四番目アリス【亜種、流血表現注意】

おもう所があったので再うp
携帯で修正しようと思ったらあかんねホント

※これは歪P様の曲「人柱アリス」を題材とした解釈小説です
なので関係者様とはなんの関係もございません

閲覧数:248

投稿日:2010/06/02 17:51:17

文字数:1,233文字

カテゴリ:小説

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