やぁ諸君。吾輩は猫又のロシアンである。

今日は、吾輩の過去の話をしようかと思う。そう、300年前の話だよ…………。




   ☆         ☆         ☆         ☆         ☆


「きゃあ~!! ロシアンさまよ~っ!!」

「どちらに? ロシアンさまはどちらにいらっしゃるの~!?」

「ロシアンさまぁ~!! ぜひ私たちをお供にぃ~!!」


300年前のことだ。吾輩はまだ普通の猫であったが、町の野良猫たちを皆まとめる存在であった。いわばボス野良猫だ。

ごろつきが多かったり、毛並みの崩れた日本猫が多い中、美しい毛並みのロシアンブルーであった吾輩は、あたりの雌野良猫の注目の的となっていた。

喧嘩だって、吾輩はだれにも負けたことがなかった。それ故に、吾輩を「兄貴」と慕う猫は多かった。そして何より、吾輩にはその時「ロシアン」という名前がちゃんとあった。そう、今の名前とまったく同じ名前だ。

何もかもが自分の好きになるような世界―――吾輩は本気でそう思っていた。


「はははっ、まぁまぁそう慌てるな。そうそう、これから旨いカツオの置いてある鮮魚店に行くのだが、一緒についてこないか? そのほうが盗みやすいしな」

「ええ~っ!?私どもなどがついていってもかまわないのですか!?」

「ああ、ついてこい。もし協力してくれるのなら、いくらでも分けてやるぞ?」

「きゃあああっ!! ぜひ!! お供させていただきますぅ~!!」


吾輩は数匹の雌猫を連れて、鮮魚店へ向かおうとした。いつも親衛隊と称して、吾輩について来るおつきの猫だ。

吾輩に叶わぬ願いはないのだ。いつでもついてくる女や部下もいる。吾輩はこの町の支配者なのだ。

そう思っていた、その時だ。


「あら…………ずいぶん薄汚い猫どもね。…………いえ、一匹ロシアンブルーが混じってるかしら。野良にしちゃ、珍しいわね」


雌猫の声。今迄に聞いたことのない声だ。

あたりを見回す。と、正面にいつの間にか、一匹の猫が立っていた。

雌猫のようだ。体の大きさは吾輩と同じくらい。黒と茶色の縞模様に覆われた、三毛のトラ猫だ。


「ずいぶん強そうだけど、そんな薄汚い猫連れて楽しい?」

「おぬしこそなんだ。このへんじゃ見かけん奴だな」


小さく睨みつける。が、吾輩は瞬時に気付いた。ずいぶんとしなやかそうな体をしている。猫が皆そうであるのは間違いないが、特別こ奴の体はしなやかそうだ。

吾輩の周りの親衛隊雌猫が前に出て睨みを利かせる。


「ずいぶん態度でかいじゃない…………!! あんたこそ、ロシアンさまに釣り合うほどの美しさじゃないと思うけど?」

「そうかしら? 少なくとも、あんたたちほどひどくはないと思うけど」


この一言が引き金になった。怒り心頭の親衛隊の七匹は、一斉に襲いかかった!


「お、おい馬鹿やめろ!!」


吾輩が慌てて止めたが、時すでに遅かった。三毛のトラ猫は、哀れ七匹の猫に引き裂かれ―――――





《――――――――ザシュッ!!》






………………る事はなかった。なんと、その三毛猫は一歩たりとも動いてはいなかった。ただその場で、足を振ったようにしか見えなかったのに、見事に七匹の猫は急所の肺をしたたかにたたかれ、地面で伸びてしまっている。

手をなめている三毛のトラ猫に、吾輩は思わず一歩、二歩と近づいた。


「…………吾輩の名は、ロシアンという。そなた、名をなんという?」


三毛のトラ猫はそっけなく見て、さらりと答えた。


「…………流歌よ。三毛虎の流歌」


吾輩は、経験のない不思議な感情に包まれていた。ただ、一つ確かなのは、体が言うことを聞かなかった。だが、不思議と嫌な感じはしなかった。


「…………吾輩と…………番ってはもらえぬか?」


吾輩の口から、勝手に言葉が紡がれていた。

流歌は、にこりとして答えた。


「…………ふふ、いいわよ。」



こうして、吾輩と流歌は、番い、ともに行動するようになった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

猫又ロシアンの過去~ロシアン、流歌と出会う~

いったんdogとどっぐとヴォカロ町!から離れまして(早いな
猫又ロシアンの過去、再投稿です。
こんにちはTurndogです。

今ではもはやルカさんと並んでもう一人(?)の主役と言っても過言ではないロシアン。
こないだなんか一番弟子相手に修造モードに入ったロシアン。
そんなロシアンの昔の女の話です。
このころのロシアンはまだただの猫ですよ。しかも女たらしのw
どうしてこうヴォカロ町シリーズの男にはろくなのがいないんだ?www

閲覧数:67

投稿日:2013/06/17 23:32:58

文字数:1,695文字

カテゴリ:小説

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