これはそう、今夜みたいな満月が出ている夜に起きた話。

そのお話の結末を知る君達に、その『あるお話』の真実を一つ、どうだろうか?




<<運命ノ子-今宵、満月の夜の->>


紅沙羅双樹という花が香る、人里から遠く離れた土地。
そこには一人の男がひっそりと暮らしていた。その男は黄緑の短めの髪の人の体に、頭に角が生えていた。

しかしそれが為、鬼としても人間としても認められず、蔑まれていた。
そして、男は故郷を捨て、誰にも知られず誰にも愛されずこの土地で過ごしてきた。


そうしてあっという間に五年が過ぎ、男には犬、猿、雉の"三匹"の仲間が出来た。
それぞれの額に三日月の印があり、それが何を意味しているのかは分からないが、男にとってはそんなことはどうでもよかった。

ただただ、三匹の仲間が不思議で、素敵で仕方なかったのだ。
男は三匹にこう話しかけた。

「お前達は三匹とも姿形が違うのに何故仲良く出来るのだろう・・・?でも、」

「とっても素敵だね!」





ある日、男が牧割りを済ませて家に帰ろうとした時、犬が慌てた様子で男に駆け寄ってきた。

「どうしたの?」
「大変だ!とにかく着いてきて!」
「分かった!」


男が犬に案内された場所には既に猿と雉もおり、傍に駆け寄ってみると大樹に裸足の娘が寄りかかっていた。

「この子、大丈夫か?」

三匹が心配そうに娘を見守る。娘は傷だらけで、意識がないようだった。
そっと肩を揺らしてみると娘が目を開け、怯えた表情で言った。

「お願いします!どうか私を隠してください!追っ手に見つからないところで・・・!」

一人と三匹は何事かと考えたが、すぐに男が三匹に指示を下した。

「僕がこの子を運ぶから、お前達は怪しいやつが近づいてこない様に見張ってて」
「了解した!」

男が娘を抱きかかえて、自分の住処へと運んだ。
その手際の良さに娘は驚いたがまずはこう問うた。

「あの、ここは?」
「ここは僕の家だよ。さあ、これを食べて」

男はそういうと秘伝の果実と呼ばれる食べ物を娘に与えた。
娘がそれを食べると徐々に傷が癒えていき、あっと言う間に娘は元気になった。

「ありがとうございます!」

笑顔で娘がお辞儀をすると、長い黒髪が動きに合わせて揺れる。
男も笑顔になったが、娘が人間だということを思い出し、表情が暗くなった。

「あのさ、君は僕が怖くないの?角あるし・・・」

娘はそれを聞くと楽しそうな顔で、

「全然!ほら、見て見て!」

黒髪の先を自分の頭に載せて男の真似をした。

「例え貴方が鬼だとしても私を助けてくれたから怖くないよ!」



男は初めて、認めてもらえたことが嬉しかった。





その日から男は娘を匿い、二人の生活が始まった。
数日経つと娘は三匹とすぐに仲良くなった。

娘は自分の素性は未だに話してくれなかったが、男は娘が話してくれるまで一切問わない事を決めた。

娘は無口だが優しい男に惹かれた。
男は自分を認めてくれた娘に惹かれた。


そんな二人を見て三匹は言った。

これは『Loveのフラグ』だと。


いつしか娘と二人は互いを想い合い、互いに愛するようになった。
ある日、二人の子が娘に宿り、誕生した。このことを三匹はとても喜び、祝福した。

二人にとっても大きな喜びだった。小さいけれど、確かな幸せ。







そして、運命の日は訪れる。
暗雲が満月を隠すような夜だった。



「見つけたぞ!我らの仇の娘!」

追っ手がついに娘を見つけたのだ。
あっという間に二人と赤子と三匹は囲まれる。

その中で男が果敢に追っ手に向かい、五人を逃した。



「逃げなさい!お前達どうか・・・!我が子と妻を頼んだぞ!」

逃げる途中に聞こえてきた声に従い、娘は逃げた。
声を殺し、道なき道を走り続け、ついに娘は愛する者の最期を感じ取る。

だが立ち止まる暇などなく、追っ手はもうすぐそこまで来ていた。


しかし娘が進んだ道の先に待っていたのは崖だった。
崖の淵まで走ると、娘は着物の懐から男から託された果実を取り出し、赤子にこう言った。

「この果実がお前の身を守り、正しき場所へと導いてくれるだろう」




男と娘は最期にこう言った。


「「聞け、我が子よ。お前に流れる血、」」

「人の血憎み、恨み晴らせ。我が種滅び与えよ」
「鬼の血憎み、恨み晴らせ。我が種滅び与えよ」

「父の血がお前を強くする」
「我の血がお前を強くする」

「「それまでこの者らが、お前を守るだろう――」」








二人の願いは赤子に託され、やがてその願いは叶う。




数年後、桃太郎と名付けられた赤子は年寄りに育てられ、鬼退治に旅立つ。



「うわあああああああ!」
「きゃあああああああああ!」
「いやあああああああ!」



いつしか日本一の旗はこう塗り替えられていた。


『人退治』と。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

運命ノ子-今宵、満月の夜の-

久しぶりに小説投稿ー!

どーも姉音です!今回はじょるじんさんの「運命ノ子」の解釈小説を書いてみました!
ずっと前から解釈小説書きたかったんだ・・・!

ホラー要素が少し、あるかもです。

奥深い本家様↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17981609

名前は表記してないからキャラのタグはいらないよな・・・?

*追記
3/31:小説投稿90作品目でしたー!

閲覧数:629

投稿日:2013/03/30 09:00:12

文字数:2,053文字

カテゴリ:小説

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