キョウ視点

エンジェ星に来て数日が経ちました。
私は、すっかりアンジェさんとアクアちゃんとの日々に慣れていました。

「…アクアちゃん」

「どうしたんだ?キョウ」

「私達って、いつまでここに居るの?」

「…いずれユアさん達が来る。その時を待つだけだ」

アクアちゃんはそれが当然とでも言うような答え方をした。
まあ、ユアさん達ボーカロイド隊の元々の目的は、悪UTAU及びそれを裏で操って居る人物を倒すこと。
ユアさんにいたっては、父親と叔母を殺されている。

じゃあ、アンジェさんは、娘や国民を失ってどう思って居るのだろうか…?

私達はUTAUが元々悪いものじゃないと知って居るからこそ、UTAU自身を認めることは出来る。
でも、アンジェさんはともかく、このエンジェの民達は…?
エンジェの民達は、UTAUを許してくれないと思った。
悪UTAUとして、完全に認識しているから。
他の第三者から見たら、敵としか見られないんだ。
操られてるなんてどうでもよくて、ただ、エンジェ星を滅ぼしかけた敵としか、みなされないんだ。

「…キョウ。少し休んで、ソウと代わったらどうだ?少し疲れてる気がするぞ」

「え…ううん。いいよ。ただ…」

私が言いかけた途端。

「キョウ、アクア、居るかの?」

「アンジェさん…」

アンジェさんが部屋に入って来た。
アンジェさんは実年齢にそぐわない、若い女性の姿をしていて、これでユアさんのお婆さんだという。
とても信じられなかったけど、純血のエンジェ人はこんな感じだという。

「おぬしらの仲間と思われるものが一人できよったのでな。確か…名をミクオと言ったかの?」

「クオさん…?」

何故、クオさんが?と一瞬思ったが、アクアちゃんはとても真剣な顔になった。

「まさか…あいつ、バグの事に気付いたのか…」

アクアちゃんは、そう言ったかと思うと、足早に歩き出した。

「ちょっと、アクアちゃんっ!」

「今からクオのところに行って来る」

「場所わかるの?」

「だから、探しに行くんだよ。大丈夫だ。内蔵されて居るレーダーでボーカロイドの居場所はすぐに分かる」

そう言って、アクアちゃんは去っていこうとする。私も、仕方ないからアンジェさんを一瞬見て、そしてアクアちゃんについて行った。

ロスト視点

「ユア…体はもう大丈夫なのか?」

俺は、疲労で部屋で休息をとっていたユアがブリッジに戻ってくるのを見て、尋ねてみた。

「うん、大丈夫。ねえ、今はどこら辺なの?」

「…もうすぐ、着く」

「そう。分かった…。キョウちゃん達も、其処に居るわね…」

「!?」

ユアの言葉に俺は思わず吃驚していた。

「分かるの。ララの体に埋め込まれてるエンジェクリスタルが私のエンジェストーンに呼応して、ララが居るって事は、キョウちゃんも居るっていう事なのだけど…」

ユアは、少し俯いて、悲しそうな顔をしていた。
その表情の意味が、俺には理解できなかった。

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「エンジェ星についたわ」

ミリさんは、画面を見ながら呟いていた。

その星は、俺にとって苦しみを味わった場所であり、ユアとの楽しい思い出も、アンジェさんと過ごした日々とか、ボーカロイドの生まれた瞬間を見た場所であった。

一番新しいのは、悪UTAUの襲撃を受けた悲しみの記憶しかなかったが…。

『ミリ。久しぶりじゃのう。ユアもな。突然じゃが、おぬしらの所に居た亜種という者を二人ほど預かっていての。今、ミクオという者を探していて今どこかに行ったがの?』

「それって、キョウと"アクア"の事ですよね?」

ユアは、アンジェさんにそう尋ねた。
アクア…?ララじゃなくて?

「ユアさん、それってどういう事ですか?アクアって、誰ですか?」

その話を聞いていたマイは、ユアに尋ねていた。
アクアというのは、俺も少ししか聞いてないが、確かララのもう一つの人格の筈…。じゃあ、あの時のルルの暴走は…。

「アクアというのは、ララのもう一つの人格です。とても男勝りな性格で、元気な子です」

「…!」

マイは、その話を聞いて、何かが分かったかのような顔をしていた。
他の者達は、さっぱり意味をわかっていなかったが。

「この前のルルの暴走は…恐らく…」

ユアは其処まで言って、また顔を下に向けた。

『…早く行った方が良いぞ。ミクオという者は"ボーカロイドの誕生した場所"に行こうとしておる』

「…!」

ユアは、顔を上げて、急ぐような口調でこう言った。

「早く、早くエンジェ星へ降りてくださいっ!」

ユアの顔は、とても焦燥感のある表情だった。


俺には、この時何が起こって居るのか全く分かっていなかった。

続く

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  • この作品を改変しないで下さい

歌姫戦士ボカロボット第33話前半

次でキョウとの再会&戦闘です。
また前後編www

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投稿日:2012/07/29 18:26:38

文字数:1,991文字

カテゴリ:小説

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