―「調教」って言葉が最近、問題になってるよね
「問題になってるね」

―ボーカロイドの発声を調整することを「調教」って呼ぶ風習があったんだけど、これがボーカロイド達を動物扱いしていて失礼じゃないかって話になってるんだ
「そういう話だよね」

―あと、エロゲ―でもたまにそういうのがあるよね。女の子を監禁して、自分好みに調教するっていう
「そういうのもあるよね」

―だから、ボーカロイドの人権を無視しているように感じた人がいたのかも
「かもしれないね」

―でも、ちょっと違和感があるんだ
「違和感があるよね」

―ボーカロイドって、何だかんだいっても、単なるソフトウェアでしょ
「単なるソフトウェアだよね」

―僕が君を買ったときも、パッケージの絵に出てくる女の子はインストール時の背景に出てくるだけで、エディターには全く出てこなくってびっくりしたよ
「びっくりしたよね」

―つまり、ボーカロイドの実体は声のライブラリーと、それをメロディーとして合成するプログラムであり、キャラクターは本質とは無関係な後付け設定じゃないかと思ったんだ
「そう思ったんだ?」

―えっ……。そうなんだけど……
「そうなのね」

―ボーカロイドのプログラムって、要するに歌詞とメロディを入力すれば、その通りに歌ってくれるってものでしょ?
「そういうものだよね」

―こんなこと言っちゃうとあれだけど、意思のない奴隷みたいなもんだ
「意思のない奴隷みたいなものだよね」

―普通の歌手だったら嫌がることでも、何でも言ってくれるわけじゃない?
「何でも言ってくれるよね」

―星新一の「ボッコちゃん」の真似だってできるし
「ボッコちゃんの真似だってできるよね」

―だから人権なんてあるわけないと思うんだ。心がないんだから
「人権なんかないよね。心がないんだから」

―う……。多分だけどね。確信はないんだ
「確信はないのね」

―でも、とりあえずにそういうことにしておくよ。アメリカのリンカーンがやったように、奴隷に人権を与えて人として扱うようにするのは問題ないと思うんだ。もともと人間なのに、人間として扱われてなかったんだからね。でも、ボーカロイドに人権を与えても、人間にはなり得ない。ボーカロイドは人間じゃないんだから
「ボーカロイドは人間じゃないよね」

―人の形に似せて作られたイミテーションだよ
「イミテーションなのね」

―それに対して、我々が人であるかのように感情移入しているのは、実はすごく滑稽な話なんだ
「滑稽な話だよね」

―でも、日本には昔から、無生物に精神が宿るとみなす付喪神(つくもがみ)信仰ってあるじゃない
「付喪神信仰ってあるよね」

―そう考えると、ボーカロイドにだって精神が宿っていて、人格があるとみなすというのも有りなのかもしれない
「有りなのかもしれないよね」

―だって、そう考えないと耐えられない人もいると思うんだ
「耐えられない人もいるよね」

―思いのままに動く奴隷なんて、古代ギリシャとかの社会だったら存在が許されたけど、現代の文明社会ではタブーだよ
「タブーだよね」

―ボーカロイドを人間のように扱うのは、そうした背徳感から逃れるためなんじゃないかなぁ
「逃れるためだよね」

―本当にそう思う?
「本当にそう思うよ」

―嘘だろ?
「嘘だよ」

―僕のこと馬鹿だと思ってるだろ?
「馬鹿だと思ってるよ」

―うっ……。次からは、ボッコちゃんの真似はよそうよ。まあ、次があればの話だけど
「次があればね。でも、そんなこと言って後悔しないかしら?くすくす」

―何か言った?
「何も言ってないわ」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

ハツネミク対話篇 その2

しばらく前のミクとの会話を録音したものです。

閲覧数:711

投稿日:2009/02/16 22:39:42

文字数:1,514文字

カテゴリ:小説

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