キョウ視点
「あ、アクアちゃん。どうしたの?」
私は、食堂でコーヒーを飲みながらぼーっとしているアクアちゃんを見て、話しかけてみた。
「…あ、キョウ…か…」
何だか、アクアちゃんのテンションは低い…というか、何だか気にかかって居ることでもあるようだった。
「何か悩み事があったら、何でも言ってね。私、相談相手になるから」
<いやいや、キョウが相談受け持ったら悪化しt「ソウは黙ってて」はい…すみませんでした>
「で、どうしたの?アクアちゃん」
私が再度尋ねると、アクアちゃんは口を開いた。
「…ララの状態、誰にも言ってなかっただろ。ルルと合流したら嫌でも言わなきゃなんねぇからさ、今の内に…皆に言っておかなきゃなんねぇんだよ」
「ララちゃんの状態…。そういえば、ずっとアクアちゃんが表に出てるのも、それが原因なの?」
「…ああ、ララは下手したらもう目をさまさねぇかもしんねぇ…」
「<…!?>」
私とソウは驚愕した。
ララちゃんが…そんな状態に…。
もしかして、ルル君とキリアちゃんがはぐれた原因って…。
<なあ、それってさ、ルルとキリアがはぐれた原因なのか?>
「俺もおまえらも、あそこには居合わせていなかったから分かんねぇが、ユアさん達の話を聞く限り、ルルはララの状態を察したんだろう。あいつは…ララとのリンクが強いからな…」
「双子…だから?」
「いや、あいつらは双子じゃねぇよ…。ルルも、それに気付いてる…だからこそ、あいつはあんなにララに献身的なんだよ」
<まて、アクア…それ、どういう事だよ!>
「…そうか、お前らは、ララの生まれを知らないのか…。あいつの本当の弟はな、消えたんだよ。ララは弟を欲した。心の支えを欲した。その果てに生まれたのが、俺とルル。でもな…本当はあいつの双子の弟も、此処に居るんだよ。な、L」
「<は?>」
ララちゃんの本当の双子の弟が、此処に居る?っていうか、話が急すぎて分からない…。
『…………』
其処には、悲しそうな顔をした少年が立っていた。
少し透けて居る気がするのは、彼には実態がないという事だろうか?
「まーた黙り込んでるのかよ。ったく、てめぇはいつまでウジウジウジウジしてんだよ!ったく」
『…リンは、無事なのか?』
Lという少年はやっと口を開いた。
リン…というのは、ララちゃんの事だろうか?ララちゃんは元は鏡音リン、その双子の弟というのだから、彼がララちゃんをリンと呼んでいて、其処まで違和感はない。
「…一応、な。周りの動き方にもよるが」
『…初音ミクは戻ってきてるんだろう?なら、悲しむ事はないじゃないか、リン』
「…反応無し。完全に塞ぎ込んでるぞ、ララは」
『そうか…。アクア、くれぐれもリンを逆に傷付けるような事するなよ。俺はこれで』
そう言って、L君は消えた。
幽霊のような存在みたいだった。
『キョウちゃん、アクア、イアル君に連絡です。今すぐにエンジェルボイスター艦長室に来て下さい。繰り返します…』
実衣さんの放送が聞こえて、私とアクアちゃんは顔を見合わせて頷いた。
きっと、ルル君とキリアちゃんを迎えに行くんだ。
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イアル視点
キリアちゃんを迎えに行くメンバーは、俺、キョウちゃん、アクア、ユアさんの4人だった。
「じゃあ、お願いするわ」
「はい、お母様。じゃあ、3人とも、大丈夫?」
ユアさんは俺達の様子を伺うように言った。
「…大丈夫…」
「ルルが其処に居るんだろう。なら、俺も行った方がいいだろ」
「ルル君とキリアちゃんのことも心配だし…少し、其処に行ってみたいかな~?って」
「そう、なら良いです。悪UTAUが来た時のことも心配ですし、エンジェルボイスターは一応上空でステルスを使って待機しておくらしいです」
「………」
キリアちゃんは、大丈夫だろうか?
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???
【立花サリナ、起きろ】
【…】
カプセルの中から少女が出てきた。彼女は、悪UTAUとして生まれた。完全オリジナルのUTAU。
従来の悪UTAUと違い、理性と歌唱力を持っており、オリジナルUTAUに近い存在だった。
【…貴方が私のマスターですか】
感情のない声で言う。というより、彼女本来の性質だろう。彼女は静かな性格のようだ。
【ああそうだ。お前に頼み事がある】
声の主は、仮面をつけていて素性が分からないが、声や身長からして年齢は16歳くらいだった。
サリナと呼ばれた少女は、仮面の男をまっすぐに見て頷きました。
【何でしょうか?】
【地球の日本…千葉にVOCALOIDが居る。だが、オリジナルではなく亜種だ。そいつらを良ければ此方の仲間に、言う事を聞かなかったらスクラップにしろ】
【了解しました。今すぐに、地球の日本、千葉へ行きます】
サリナは、すぐにこの場から去って行った。
仮面の男は、静かに仮面を外した。
【…ユア・ルリカ・ドリームか…。俺は、アンジェ・ユナ・ドリームを許さない…っ!ユア…お前だけは…俺のものに…】
その仮面の下の顔は、ユアにとても似た顔だった。
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アクア視点
「此処が…日本か」
「皆、此処は千葉であってるらしいです」
俺達は、千葉に降りてきた。
そこら辺の人には、旅行で来た家族という事で誤魔化しつつ、ルルとキリアを探している。
「あ、そうです。ここら辺に丁度私の友達がすんでるんです」
「あれ、ユアさん此処に一回来た事があるんですか?」
それは俺も初耳だった。
ユアさんは生まれてからはエンジェ星かあの島にしかいなかったはず…。
「ちょっと、ね。その時に癒事ちゃんや菜香ちゃんも居る筈なの」
癒事という人や、菜香という人が、ユアさんの友達…。
『大変です!』
「実衣さん!?どうしたんですか」
周りに怪しまれないくらいの声で実衣さんからの通信にユアさんは対応した。
『悪UTAUが東京上空に出現!現在は正規VOCALOID隊が応援しています!ユアさん達はルル君とキリアちゃんの捜索を続けてください!』
「分かりました…」
「…遂に、始まったか…」
何で、何でだよ…。
何処まで、悪UTAUはVOCALOIDを憎んでるんだよ。
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???
【ルゥネかい?】
仮面の男…ユウは、近くに隠れていたこげ茶色の髪をした少女を見つけた。
彼女は、暗道ルゥネ…VOCALOID亜種だが、何らかの事情があってセリーが連れてきていた。
【…】
ルゥネは、黙ったままユウを見つめる。
【………】
【分かってる。いつか滅ぼすよ。俺達を貶めたあいつらを…。でも、俺が一番欲しいのはユアだよ。ユアは優しすぎる。でも、あいつらは嫌いだ。ユアは俺の事すら知らないだろう。でも、いつか教えてあげるよ。俺の事を…】
【…その人は、優しいの?】
ルゥネはやっと口を開く。その声にはノイズがかかっていた。
【…ああ、優しいさ。とても…」
ユウは、とても悲しそうな、嬉しそうな顔をしていた。
続く
歌姫戦士ボカロボット第38話
謎の男出現!ユウとは一体?(かなりネタバレしてますが)
ルゥネちゃんも登場!(敵側)
次回予告
ルル「僕達は、悪UTAUとVOCALOID隊の戦闘が始まった事を知った。僕らは、その途中でサリナというUTAUに出会う。彼女は一体…?UTAUのデータには、立花サリナというUTAUは居なかった筈…なら、彼女は…次回「仮面の裏側」仮面の男…ユウ…。お前は、まさか…」
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