【A】
(風が吹き)薄雲が棚引いて、
そよいで揺れる桜の枝に、朧に霞む糸のような細い三日月が引っかかって見えます
明かりを灯しては陰ってと遷ろいゆく(月の)満ち欠けは、
まるで毎夜のようにただ(貴方を想って)千々に乱れていく私の心を映すかのようです
【B】
(その頃までには帰ると)約束したはずの待宵も、(月日が)巡って早遠い日のことになってしまい、
儚い嘘になってしまったけれど、それでも(貴方への)この想いは尽きることがありません
【C】
運命というものは知っていても、願ってしまうのは、もう一度(会いたい)ということ……
【A'】
雲の果ての空の向こうを遠く見上げて眺めてみても、
傾いていく天の鏡(のような月)は、(貴方からの)便りを映すことすらもしないのですね
【D】
行ってしまって帰ってこない私の愛しい人ではなくても、
(世間、運命という)風の前には何もかもが同じく儚くか弱い塵のようなものだということを知りました
【A'2】
新月の夜の闇には私の(哀れな)身の上を嘆いて涙に暮れ、
上限の月が満ちゆくのを眺めてはあの日の貴方を恋い慕います
ただでさえ永遠では有り得ない一夜(人世)を嘆けとばかりに、天に残った有明の月がずっと物思いを誘うのです
月影、何思ふ・現代語訳
拙作・『月影、何思ふ』http://piapro.jp/t/2EPwの現代語訳版です。
直訳ではなく意訳です。
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