「私、雨は好きなの」と
君は傘も差さずに
小雨降る初夏の小路
鼻歌交じりで歩く
桜の葉が青々と
寂し気に露をはじく
毛虫が苦手な君は
桜並木を迂回する
君の背を見つめてた
その後ろ姿が
瞬きの合間に消えそうで
僕は目が離せなかったのさ
強くなった雨足に
君は髪を濡らして
鼻歌をやめてしばし
手をかざし雨を掬う
君がふと立ち止まる
雨音に包まれて
これは困ったという表情で
やっと君が振り返る
風邪ひくよと言う僕に
大袈裟なゼスチュアで
聞こえないよと返す君に
傘なんて放り投げて
駆け寄りたいと思った
雨続く初夏の小路
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