泣くな。
和葉、泣くんじゃない。
お前は強い子だ。
俺がいなくても、生きていける。
だから、みんなの事を頼んだ。
お前なら、みんなをまとめれるはずだ。
俺はわかる。
お前が初めてここに来た時から、感づいていた。
お前は、俺より強くなれる。
だから、お前に、後は、任せた。
空から、見守ってるぞ……。
古びた道場。
門下生はもういない。
全員去っていった。
あるのは師匠の意思。
もう、叶うはずのない師匠の意思。
なぜ、こんなことになったのだろう。
友の病死。門下生の裏切り。
いや、違う。
あの時、師匠が死んだその日から、全てが狂ったんだ。
僕が、あの日、師匠の邪魔にならない場所にいれば、こんなことにはならなかったのだろうか……。
師匠の手助けのつもりだった。
それが、足手纏になるとは思っていなかった。
僕がいなければ、刺客を倒せたはずだ。
僕が、僕が師匠を……。
「くそおっ」
涙が出てしまう。
次から次へと、師匠の事を思うと、涙が止まらない。
「和葉、泣かないでください。空で見守ってるお師匠様が怒ります」
僕を後ろからそっと包み込んで菜々が悲しそうにそう言う。
「菜々、すまない」
僕はそう言いながら上を向いた。
これ以上涙を流さないように。
「月が綺麗ね」
「……あぁ、そうだな」
最後の月。
これほど、月が綺麗に思えたのは初めてだろう。
「菜々。行かなくてよかったのか?」
「えぇ、最後の最後までお供します。お師匠様との誓いを破りはしません」
「そうか、ならば、最後の晩酌としよう」
もう、気がついていた。
道場に火が放たれた事に。
正直、菜々だけは、逃してやりたかったが、菜々が嫌というなら仕方ない。
菜々が盃に並々と酒を注ぐ。
僕も菜々の盃にお酒を注ぐ。
「今宵の月は、旅立ちの日に相応しい」
「お師匠様の真似ですか」
「あぁ」
「この盃に映る月もまた風流なものよ」
「似てるな」
「そうでしょうか?和葉の方が似ていると思いますが」
「そうか」
僕はそう言うと立ち上がり盃を天高くあげる。
焦げ臭い匂いが既に充満している。
炎の熱がとても熱い。
「師匠。そちらで三人一緒に暮らしましょう。争いなどない世界で」
そう言って僕は、盃を傾ける。
菜々も同じように立って盃を傾けた。
「では、和葉。お願いします」
菜々はそう言うと、道場の中に戻り正座した。
僕は、この手で、菜々の命を止める。
それが、菜々の最後の望み。
僕は……。
「月を仰ぎながら飲む最後の酒はまた格別なものよ」
師匠の最期の言葉。
「最後まで和葉の隣におれて、菜々はうれしゅうございます」
菜々の最後の言葉。
赤く染まった刀。
赤く染まった道場。
僕が最後に言い残すこと。
それは……。
師匠への感謝の言葉。
月光とともに散る
てきとーに書きましたw
ご飯なんざ食べてないので、くっそ変な作品なことでしょう。
思考回路ショートしてます
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