世界はもう、轟いていた。
 なんて言えばいいのかわかんないけど、つまりはそんな感じ。
 摩天楼は人が犇めきあって、もう誰が誰やら解らない。

「……あの丘、解る?」
「町外れにある、古い教会があるところ?」
「そう、そこ。そこへ行って」
「どうして? 政府が言ってたシェルターとかじゃダメなの?」
「ダメ」

 ……自分の声に押し切られると何か違和感を覚える。

「あの丘を超えたら20秒で、その意味を嫌でも知ることになるよ」

 その声に自分のすべての神経がぞわりと蠢いたのがわかった。
 それって、いったいどういう意味なんだ。
 私はその意味を知らされることもなく――ただ走るしかなかった。




 交差点は当然渋滞していた。
 当たり前だよな……と思って近くの自販機で買ったコーラを飲んでいるとふと見覚えのある姿が見えた。

「――コノハ……?!」

 そこにいたのは――一瞬だったがそれでもわかった。
 九ノ瀬遥、あだ名はコノハ。
 私の――親友だった人間だ。
 それが――特に何もしようとせずふらふらと歩いていた。

「……何してんだあいつ……嘘だろ……!?」

 アイツがそこにいるはずなかった。
 だってコノハは――死んだんだから。
 つい二週間前、高校で高校生が刺された事件があった。逮捕されたのは化学教諭。刺されて――死んだのがコノハだった。
 コノハは――いつもぼおっとしていて、どこを見てるかもわかんなくて、それでも放って置けなかった。なんでだろう。解んないけど。
 でもあいつあんな黒い服好きだったかな……とか思ってたら人ごみにまぎれて消えちまったよちくしょう。
 神父さんが走ったり、ぶつかったり、救急車のサイレンがうるさかったり……なんなんだまったく。うるさいったらありゃしない。
 とりあえず、私はいかないといけないんだ。
 あの丘の向こうへと。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

カゲロウプロジェクト The animation 第二話②

a headphone actorⅡ

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投稿日:2012/08/22 23:51:31

文字数:794文字

カテゴリ:小説

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