一期一会
猫とロハス
眼鏡を外して、異世界のような帰り道を歩いていたら、視界の隅にかすかに震えた塊を見つけた。
なんだろう?と思い眼鏡をかけなおして、塊の場所まで戻ると、赤ちゃんと呼ぶには少し大きな子猫がうずくまっていた。
どうやら右前足を骨折したようだ。
子猫を抱えようと手を差し出すと、声を出さずに威嚇してくる。
「声も出せない程に衰弱してるのか」
我が家はすぐ目の前だったので一旦家に帰り、タオルをにぎりしめ、
子猫の元へ駆け戻る。
「手当てしてあげるから、うちにおいでよ」と言いながらそっと手を出す。
が、やっぱり威嚇して後退りする。
「人に怯えているのかな。この子は人に飼われたくないのかもしれない。」と思った。
何かをしてあげたくて、目の前のコンビニで猫缶を買った。
はじめは威嚇していた子猫も、猫缶のフタを使い口の中にキャットフードを押し込んだら、途端にがっつき始めた。
骨折していなかったのか、右前足もしっかり地を踏んでいた。
飼われるのを拒み、傷ついても自由を選ぶ子猫の姿は、雄々しくも、逞(たくま)しくも見えた。
満腹になった子猫は、あからさまに私を意識してきた。
上目遣いににらむ子猫。
試しにまた手を出したら、今度は声をたてて威嚇した。
「エサやったのに、何だよ~」と思いながらその場を離れた。
振り向くと、まだキャットフードのカップに頭を突っ込んでいた。
「声出せるようになったんならいいや。」
一旦家に戻り、数十分後また様子を見に行った。もう姿はなかった。
自由な野性の子猫の逞(たくま)しさを、飼われている猫である私は羨ましく感じつつ、あの子猫が長生きしてほしいと願わずにはいらない。
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