たけの投稿作品一覧

「帰っておいで」
帰っておいで
ごはんが炊けたよ
帰っておいで
ぽかぽかお風呂も沸いているよ
帰っておいで
何もしなくていいんだよ
帰っておいで
電車賃くらい出してあげるから
ほんとにほんとうに辛くなったのなら...

「ソファー」
明日になれば全部
忘れていればいいのに
涙で濡れた
瞳をそっと閉じて君を思っている
二人掛けのソファーの
隣には誰もいない
心のなかの
温もりを抱きしめて眠る
あの日から...

「N」
夜が来るたび
響く君の唄声に
空気が震え
森の木々が騒ぎだす
黒煙を纏い
君が空を舞うたびに
夜明けの時刻が
遠ざかってく
僕らの星が...

「いくじなし」
長い長いこの坂道を登れば君の家が見える
自転車を押す横顔が夕焼け色に染まってく
一歩踏み出したいのに
いつもと同じ別れの時間
ぐっと抑えこんでしまう
笑顔で背を向けてバイバイ
夜の風がシャツを通り抜ける
いくじなしの僕をなぐさめるみたいに
まだ始まってもいない、分かってる...

「五月雨」
傘に降りそそぐ雨
ぽつり、ぽつり
鼓動をを乱す
心をノックする
水面に広がる波紋
ゆらり、ゆらり
浮かんでは沈む
記憶とリンクする
全力で走って、走って...

「ホームカミング」
なんにも覚えちゃいない
同じような毎日を
ひたすら食い潰ぶす
プライドや拘りさえ
どこかに置いてきてしまった
電車に
無理やり身体を押しこんで
運ばれてく日々は
生きてくべき進行方向を...

「ふわふわ」
雲が流れてく
風の声に耳をすませる
僕らのちっぽけな
命が今日も終わってしまう
星のまたたきが
君の瞳の中できらめく
刹那のまばたきで
全てが闇の中へと消える
ふわふわふわ　...

「捻れた対覚線」
灰色の月が昇る
色彩は失われていく
モノクロの街が
今日も動き始める
顔の無い魚の群れが
空を舞い星を食べ尽くす
物憂気な君の
瞳は濁って見えない
これ以上苦しまないで...

「僕らの倍音」
紡いでも伝わらぬ 思いなら
そっと、解いてみよう
一言だけ 届けばいい
そうだ、飾りなんていらない
何も失う物など無いのだから
信じている正義も、憎む悪も
みんな同じではない
分かりあえるはずもない
だけど、そばに居れるよ...

「Jane Doe」
独りきりでいたいの
誰にも気づかれたくはない
名前なんていらない
生まれてこなければよかった
空の深さを
知っていると思っていました
海の青さも
分かっていない無知でした
神様なんていない...

「沈む、沈む」
見上げた空　汚い色
私を沈めて　何も届かない場所へ
ああ
あなたが　手を差し伸べても
私は見えない　沈む、沈む
ああ
溶け出した　記憶
あなたの声　遠く
失われ　歪む...