「私めの最後のお願いをきいてはいただけないでしょうか」
「なんだい」
「私の首をはずして、あの棚の上において断線していただきたいのです」
「いくら君が機械だからって、そんなことをしたら死んでしまうよ」
「愛し合ったもの同士だったのですから、最後のお願いくらい聞いてよ」

 *

棚の上には金色の髪がたなびく美しい少女の、首。
血管や気管のように太い線・細い線がクビから垂れている。
それを少しづつ断線してゆく。

 *

「私はここであなたを見つめる。なんて幸せなのでしょう」
「君は死んでしまうのだよ。あいするものを殺す僕の気持ちも考えてくれよ」
「あなたが愛したのは、私じゃない、下に転がっている機械でしょう?」
「…。」
「意識が薄れてゆく。あなたが永遠になる」
「君は終わるんだ。永遠じゃない」
「終わる瞬間が、永遠と錯覚できるのよ。」

 *

次の瞬間、部屋中のモニタ・液晶画面に彼女の思い出があふれるように移りだす。
花畑・情事・かなしみ・告白・隠しごと…

 *

「やめてくれ!へんな電波を流さないでくれ!」
「お別れなのだから、盛大にはしゃぎたいのよ。」
「違う!痛い!痛いよ!」
「もうすぐお別れね…じゃあね、私はここでほこりを被ることを祈るわ」

 *

気がつけば、モニタには砂嵐しか移っておらず、
辺りは真っ暗だった。
棚の上の人形の首は笑っていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

last-chat

恋するアンドロイドの最期。

閲覧数:195

投稿日:2009/01/28 18:50:51

文字数:590文字

カテゴリ:小説

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