前々回投稿の【小説】ドナドナのレン視点話。カイレンなので注意。
でもそんなに腐向けっていう雰囲気もない……と思いたいw
続編っぽくないです(汗)前作の過去編っぽい。

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雨が降る。雷鳴が轟き、大地が揺れる。
荷馬車が揺れる。


僕は思っていた。鳥になれたらいいな、って。
そうしたらどこまでも飛んで行けるから。
誰にも見つからない場所に行けるから。
でも僕は、鳥になれたらなんてもう思わない。
鳥は一人でしか飛べない。誰かを乗せて飛べないなら、それは意味のないことだから。

大切な人が、できた。
たった一人の僕の家族が連れていかれた時に助けてくれた、空のような深い青が似合う人。
僕の手を引いてどこまでも逃げてくれた。
彼が歩みを止めるまで、名前も知らずに僕は彼の背中とその大きな手だけを信じて走った。
その人の名前はカイト。歌手だと言った。
僕とは髪の色も目の色も宗教も国も違っていたけれど、好きなものは一緒だった。
僕が泣いていると、カイトは歌を歌ってくれた。明るくて楽しい歌。まるでクリスマスの歌みたいな歌。
僕は、嬉しくて泣いた。歌は思いを届けるから。カイトの気持ちが、伝わったから。

僕はそれから泣かないことにした。辛くても歌を歌って自分を励ました。
カイトも一緒に歌ってくれたから、辛い時も一緒にいてくれたから。歩いて行けたんだ。
知らないでしょ?僕が君にどれくらい力をもらっているかなんて。
毎日朝目覚めて絶望を感じても。君が傍にいてくれるだけで絶望はまたどこかにいってしまって、代わりに希望が泳いでくるの。
僕が一人だったなら、こんなにも温かい気持ちでいられやしなかった。
僕は鳥になんてならなくていいと思った。カイトとこの不自由な大地の上で、どこまでも歩いていきたいから。

そうして僕らが行き着いたのは小さな酪農を営む農村。一面に広がる牧草地となだらかな丘が続く。
カイトが最後のお金で家を買ってくれた。庭一面に野花の花畑がある綺麗な家だった。
埃だらけの家を掃除して、食器を2つずつ揃えた。
楽しくて楽しくて仕方なかったけど、鏡に映った自分を見ると悲しくなった。僕に似た大切な家族のことを思い出してしまうから。
泣かないと思っていたのに、泣いてしまった。
今どうして自分だけが幸せでいるのか、それが後ろめたかった。
カイトは僕を抱きしめて、そして歌ってくれた。それはラブソングで、温かいメロディーだった。
僕は心の中で呟いた。
――ドナ
その後に僕はいつも家族の無事を祈る言葉を唱えていたけれども、その時はこう祈った。
――ドナ、どうかカイトと一緒に居させて。鳥になれなくたっていい。誰にも愛されなくっていい。一生逃げ続けることになってもいい。
どうか、どうか……空色のこの人と一緒に居させて下さい。


雨が降る。雷鳴が轟き、大地が揺れる。
荷馬車が揺れる。
空色のあの人は、赤に染まっていた。手に残る赤は、あの人の赤。
耳に残るのはあの人の僕の名を呼ぶ声。

僕は歌った。君に教えてもらったラブソングを。
いつもだったらすぐに止まるのに。どうしてだろう。涙が止まらない。
傍に、君が居ないからだね。

――ドナ、鳥になれなくていいって言ったけれど、あれは間違いだった。誰にも愛されなくっていいっていうのも、一生逃げ続けることになってもいいっていうのも。
僕は鳥になってあの人のところに飛んでいきたい。そして愛されたい。一生傍に居たい。
欲張り?そうだね。だからドナは僕の願いを一つも聞いてくれなかったんだよね。
じゃあ最後に、最後に一つだけ。

――どうか、天国にいかせて。あの人に会いたいから。傍に居たいから。


荷馬車が行き着いたのは、地獄。ガスで殺されるんだという。
それでも僕は少しも怖くなかった。
ドナが約束してくれたから。

僕は目を閉じた。聞こえるのは、あの人の優しい歌声。愛しいメロディー。
ヒマワリが一面に咲く美しい場所で、僕はあの人を振り返って笑った。
空色の似合うあの人は、優しく抱きしめて、あの歌を歌ってくれた。
歌詞の意味はまだ分からないけれど。美しくて優しいあのラブソングを。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【小説】ドナドナ【レン視点】

ちょっとやってみたかったんです。
カイトは歌手でそれなりに有名な人物。
リンとレンは孤児院で育ったけど、迫害によって逃げる運命を辿り、
リンはレンを庇って連れていかれた。
偶然居合わせたカイトがレンを助けたというどうでもいい設定があったりするんだけど。
そこは重要ではなかったのであんまりはっきり書きませんでした。
長くなるのも説明っぽくなるのも嫌だったので……。

閲覧数:679

投稿日:2008/07/27 01:44:00

文字数:1,745文字

カテゴリ:小説

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    ご意見・ご感想

    >ボスさん

    コメントありがとうございます!
    最高のお言葉です!!
    読んでくださってありがとうございましたvv

    2009/03/25 00:29:54

  • ボス

    ボス

    ご意見・ご感想

    泣きそうなりましたー(TT)

    2009/03/24 22:32:39

  • 唐歌

    唐歌

    ご意見・ご感想

    > yamakawa01さん

    レン編も読んで頂けて嬉しいです!
    ありがとうございますm(__)m

    カイトからの想いだけでなく、レンからの想いも描きたかったので視点を変えて書いてみました。
    勿体無いお褒めの言葉を頂いてしまい恐縮です。
    今後小説をうpするかどうか分かりませんが、その時はまた読んで頂ければ幸いです!

    メッセージ、本当にありがとうございました!

    2009/03/07 16:44:33

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