…リン。
 君は、僕が最後に言った言葉を、憶えてるかな?
 きっと、憶えてくれてるよね。だって、寂しいはずなのに、悲しいはずなのに、…それでも、君は笑ってくれているから・・・。

 青い空、見渡す限り一面の雪景色。
 太陽の光できらきらと輝く白い雪を眺めながら、僕は小さく微笑む。そして、隣を歩く君に視線を移した。
 いつもと同じ白いリボン。僕によく似た顔立ち、まっすぐ前を見つめる緑色の瞳…。
 なにもかも、変わっていない君。ただ、ほんの少しだけ寂しげな表情。
 その理由をわかっているのに、原因は僕なのに、僕は君に何もできない。
 だって、僕はもう二度と君に触れられない、君の瞳に僕は映らないのだから。

 去年の冬、僕は動かなくなった。でも、僕の心は消えなかった。
      『―――僕がいない明日でも、君は笑っていて』
 その言葉の通りに、君が笑ってくれているから、僕は今も、君の隣にいることができるんだ。
「ありがとう、リン」
 そっと、君への感謝の言葉を呟く。でも、君は気付かない。
「約束したのに、春は私ひとりで見ることになっちゃうね……。…レンの馬鹿」
 春に一緒に桜を見ようと約束した大樹を見ながら、君が言った。
『レンのバカーっ!』
 いつも笑顔でバカバカと言っていた君。リビングの床で昼寝していた君。
僕のおやつを勝手に食べて、後でお詫びに自分のおやつを分けてくれた君。
 そんな君と、もっと一緒にいたかった。
 意地悪な君でも、僕の大切な家族だった。
 君と手を繋いで、もっと色々な景色を見たかった。
 一緒にいられるだけで、一緒に笑い合えるだけで、僕は幸せだった。
 
 君がいる世界が光なら、僕が今いる世界は闇。だけど、君が僕の最期に言った言葉の通り、笑っていてくれれば、僕がいる世界にも光が届くんだ。
 ありがとう、リン。僕に光をくれて。
 ありがとう、リン。僕の言葉を憶えていてくれて。
 …ごめんね、リン。一緒にいられなくて。約束を守れなくて…。

 明日も、空は青く澄み渡っているかな?
 明日も、君は笑ってくれているかな?
 ねぇ、リン。たとえ見えなくても、聞こえなくても、触れなくても。
 僕は、いつでもリンの傍にいるよ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

君がいる世界【小説版】

http://piapro.jp/content/quurm392z9qzohifの小説版です。
初めてこれを読む方は、リン視点→http://piapro.jp/content/pzter1fjvhlqllqi
を先に読んだ方がいいかもしれません。
こんな私ですが、レン大好きです!

閲覧数:277

投稿日:2010/02/13 19:01:31

文字数:934文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • ayuu

    ayuu

    ご意見・ご感想

    こんばんは^^ayuuです♪
    拝読させていただきましたっ!

    うわあああ…!リン視点のも好きですが、レン視点も最高です!
    鳥肌立ちましたっ><
    ブクマいただきましたっ^^

    2010/02/13 22:00:24

    • +ゆう+

      +ゆう+

      さっそく読んでいただきありがとうございました!!
      これからも頑張って投稿しますので、読んでくださったら嬉しいです☆

      2010/02/15 14:59:50

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