タグ「MEIKO」のついた投稿作品一覧(53)
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63.輝きを留める者
おだやかな波が、朝の浜辺を寄せては返していく。同じ動きをくりかえしてはいるが、同じ波は二度とは来ない。
「……前は、蹴られたのに」
「今は、そんなことしないよ」
男が、手に握った短剣の柄を向けて、ハクにそれを返す。光の中で見ると刃は少し欠けていた。ハクの命を、暴徒から救っ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 63.輝きを留める者
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題 「本物のツバサ」
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たとえそれが 蝋で出来た
偽の翼で あるとしても
太陽さえ 超える気持ち
本物にも 負けはしないよ
A
悲しく 苦しく 暗い闇の中で
おびえて凍える身に
ひとつ射した光...【歌詞】本物のツバサ【卒業】
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55.5 間章 ~リンとルカ。カイトとメイコ~
空を焦がす夕焼けが去り、夕闇が激動の黄の国にゆっくりと降りてきた。行交う人は皆興奮し、すべての通りが祭りのように沸き立っている。
人々の顔は、夏の日照りにさらされて、乾き、汚れ、やせ細ってはいたが、今や疲れ切った表情をする者はいなかった。
戸惑い...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 55.5 間章 ~リンとルカ。カイトとメイコ~
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55.王の首の収穫祭 ~運命の午後三時~
午前十時の鐘が響くころには、すでに王宮広場は人で溢れていた。
みな、女王の処刑を見に来たのである。
自分たち黄の民を苦しめた、悪の女王の最期を見届けに来たのである。
その日も朝から快晴であった。
夏の暑さも涼やかに去り、見事な秋晴れである。
レン...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 55.王の首の収穫祭 ~運命の午後3時~
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54.囚われの女王
てっきり地下の牢屋もしくは強盗や殺人などの罪を犯した者たちの監獄へと送られると考えていたレンだったが、その予想は外れた。
メイコが女王の拘置場所に選んだのは、国教会の塔の一室であった。
とはいえ、だんだんと秋の気配の濃くなる季節に、石造りの塔の部屋に幽閉されるのは苦しかった...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 54.囚われの女王
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53. 悪の娘、悪の召使
「この、無礼者!」
レンは、自分の声が凛と響いたことに満足した。
「……よかった。間にあった。」
……自分が、彼女の身代わりになれる間に、この国は変化を成し遂げた。
顔はいくら似ていても、もうじきレンの声は太い男の声に変わる。
兆候は出ていた。だから、レンは出来るだ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 53.悪ノ娘、悪ノ召使
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52.リンの本音、レンの告白
「これを着てお逃げなさい」
レンが自分の服を突然脱いで差し出したのを、リンは呆けたように見つめていた。
「レン。逃げるのは召使のあなたの方でしょう? あたしは女王ですもの、ちゃんと残って、王の政治の責任を取らないと」
「馬鹿野郎!」
ついにレンは怒鳴った。
「君は女...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 52.リンの本音、レンの告白
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51.レンの思い
もうすぐこの国は終わるだろう。
この朝、レンは目覚めてふと、確信した。
この日の朝も、王宮広場は日の出から大騒ぎだった。だんだんと、武具を持った人が増えてくる。王宮に武器を向けることを恐れなくなってきているのだ。
やや黄色みのかかった木の葉が、レンの目の前を風に吹かれて舞い...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 51.レンの思い
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50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~後編~
教会の鐘が鳴り響いて一日の終わりを告げた。夜八時の、この日最後の鐘の音だ。
「じゃあ、メイコ。私、そろそろ下の食堂で歌ってくるね」
メイコが、自分の寝台に立てかけた楽器を右手に取り、菓子を食べ終えた盆に二人分の杯を左手に乗せて器用に扉を開けた。
「メイコも、...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~後編~
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50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~前編~
夕方になっても、黄の国の王都の興奮は収まらなかった。夏の暑さはすっかり引き、涼しい風が夜と星を連れてくる。
相変わらず乾燥した満天の星空の下、秋の始まりの日の夜は、人々の熱気に包まれていた。
「いいぞー! メイコー!」
「姐さん、かっこいいよな!」
「恐怖の...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 50. 誕生、紅き鎧の女騎士 ~前編~
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49.イグニッション(点火)
「パンを寄こせ!」
「パーンをよーっこせ!」
群衆の叫びに節が乗り、さらに声が大きく広がっていく。
「……ふふ」
王宮広場に続く回廊を歩きながら、リンは薄く微笑んでいた。
「……こんなに困窮するまで、あたしたち王や諸侯に頼りきりだったくせに」
ドレスをひるがえして...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 49. イグニッション(点火)
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48.秋の月、第一日目の朝
夜明けとともに、遠くから、近くから、ざわめきが聞こえてくる。それはやがて小さなまとまりとなり、だんだん大きな塊となり、乾いた黄の大地を埋め尽くす。
昇る陽とともに、熱い人のうねりが近づいてくる……。
「リン様! リン様!」
朝一番に駆けこんできた女性の召使は、すで...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 48. 秋の月、第一日目の朝
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46.革命の萌芽 ~後編~
「……おい! 」
押し込んだ男の一人ががなる。
「なんのつもりだ、てめぇ!」
「酒なんて飲んでやがって、てめえ」
男たちがぐっとメイコに向かったそのとき、彼女はその目の前で鮮やかに薬草酒をあおった。そして、その杯を音高く彼らの足元めがけて叩きつけた。
男たちの動きが...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 46. 革命の萌芽 ~後編~
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46.革命の萌芽 ~前編~
黄の国の王都は、静まり返っていた。
いつもの夏の終わりのような、落ち着きのある静けさではない。人は居るのに扉の向こうで息をひそめているような、そんな不気味な静けさである。
とある宿の食堂で、『巡り音』のルカは歌っていた。日も暮れてから大分経ち、通りはすっかり静まり返...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 46. 革命の萌芽 ~前編~
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【ねんど】くるくるカイメイ
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【ねんど】ある森の小さなお店の一日 3番
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34.届けられた密書
リンは進軍の只中にいて、集まる人々を激励し、鼓舞した。
「黄の国の明日は、あなたたちにかかっているわ! 」
実際その通りだった。旱魃で苦しむ人々は、女王から支給される食べ物と賃金は本当に魅力的だった。もとより居た兵士たちは新しく参じた人々を兵士として激励し、新しく兵士となっ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 34.届けられた密書
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33.緑の思惑、黄の進軍 ~黄編~
そのころリンは、ホルストの編成してあった軍を動かし、緑の国に向かっていた。
「ホルストはたしかに、良い読みをしていたわね」
王都は諸侯に任せてある。リンは彼らにある仕事を頼んでいた。
ホルストとシャグナの遺体と領地の後始末である。
ホルストの遺骸は、見つか...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 33.緑の思惑、黄の進軍 ~黄編~
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33.緑の思惑、黄の進軍 ~緑編~
「ミクさま!」
この日も緑の国の女王、ミクは、ハクとともに刺繍にいそしんでいた。そのミクのもとに、金色の髪の若い女が飛び込んできた。ハクとともに和やかな時を過ごしていたミクの緑色の目が、一瞬で緊張をはらんで輝く。
「ネル! 待ちかねたわ!」
ミクが玉座から立ち...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 33.緑の思惑、黄の進軍 ~緑編~
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32.鳴く風、巡る音
「生きたい。生きて、この国の行く末を見たい。」
……それが黄の国の巨星、ホルストの最期の言葉となった。
小さな鞄に全ての荷物をまとめ、メイコは長く暮らした城を出た。中身は全て金貨だった。リン女王から頂いた、退職金だった。
服も本も、思い出も全て城で処分するように、出会った...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 32. 鳴く風、巡る音
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空よ 風よ 高き峰よ、
唄う雲になりたい
君の影に重ねて
そっと守るよ
暑いときは日陰に
寒いときは雪綿
そっとかぶせてあげる、
唄う雲になりたい...【歌詞】唄う雲になりたい
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31.落ち逝く星
「ホルスト様!」
玉座の間の外の番兵が、血まみれになって出てきたホルストと医者のガクに色を失った。
「すぐに医者と担架を!」
「私が医者だ。担架と、そして部屋をひとつ空けてくれ! そして私の道具を返してくれ!」
すぐに走り出そうとした番兵を、ホルストの声が止めた。
「いい。……...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 31.落ち逝く星
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30.解雇、そして
「私が死すれば、この力、黄の国は失うぞ!」
そう叫んだホルストを、女王リンは剣で刺した。
「……!」
ぼたり、と重い血の塊が赤いじゅうたんに落ちた。
「リン殿! ホルスト殿!」
「ガクの縄を解きなさい。その医師は単なるホルストの雇われ者。もう用は無いわ」
縄を解かれたガクが...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 30.解雇、そして
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28.女王リン、即位
レンと王女の部屋で落ち合い、王女の服装に戻ったリンは、まずレンに指示を出し、緊急事態の名目で王と王妃の部屋へ向わせた。
目的は、亡くなっている王と王妃を発見するため、そして、彼らに長年にわたり危険な投薬をしていた医師の身柄を押さえるためである。部屋に着いたレンは、大声で兵士...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 28.女王リン、即位
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27.黄の国の王、死す
レンは王女の部屋に忍び込み、明るい黄の色のドレスに着替えた。黄色のドレスは夜に咲く花のように闇の中でよく目立つ。市におしのびで出かけるリンに代わって何度も王女に扮したレンにとって、豪奢なドレスさばきはお手の物だった。
髪をいつものリンのようにしっかり分けて整え、燭台を準備...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 27.黄の国の王、死す
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26.嵐の前夜
「王女がいない! 」
次の朝。なかなか起きて来ないリンを、お疲れのご様子だから、と案じたのがいけなかった。
「メイコ殿!」
町中を駆け回ってきたガクが宿へと飛び込んできた。
「追いかけようにも町中の馬が出払っている!」
「やられた! 」
メイコは思わず叫んだ。早馬、馬車馬、郵便...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 26.嵐の前夜
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25.もたらされた凶報
「……緑の国のミク女王が、青の皇子と婚約した」
なんだ、とリンは冷たい溜息をついた。それならとっくに知っている。ホルストにもいずれそうなるだろうと伝えたはずだ。
「……なお、ミク様は、譲位するおつもりはないそうだ。緑の国の女王として、青の皇子と結婚するそうだ」
「なんですっ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 25.もたらされた凶報
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24.決意
山道を越えて王都に向う道すがらも、水に税を課していることがリンの心を重く締め付けていた。初夏、青の国に出発する前も同じ道を通ったのだが、すでに同じ山とは思えないほどに草木が枯れ果てていた。
谷を流れる川の水はすでに無く、埃にまみれ乾ききった川底を無残に晒していた。
「雨の少なくなる季...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 24.決意
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23.不穏な帰還
再び20日に及ぶ海の旅をして、リンら一行は出発した黄の国の港に戻ってきた。
緊張と、自分の国に戻ったという安堵をないまぜにしながらリンは船を下りた。出発した時からひと月近い時間が流れている。黄の国の気候はすっかり乾燥した夏の様相を呈していた。
迎えた者は、ひと月前と同じ、この...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 23.不穏の帰還
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22. 海辺にて 後編
いろいろなことがあったというのに、波は相変わらず穏やかに砂浜に打ち寄せている。
ゆっくりと沈んでいく太陽に、静かにやってくる夜の涼風。何も変わらない青の国の夏の夕暮れだが、月の形だけが変わっていた。
メイコ、ガク、そしてリンと杖をついたレンは、青の国から見る最後の夕焼け...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 22.海辺にて 後編
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22.海辺にて 前半
それからのリンの七日間は飛ぶように過ぎた。メイコが当然のように、「民間においてどのような医療が現実的なのか、様子を見たいですから」とレンが入院している薬師の家を見学場所に指定した。おかげで、リンは思う存分にレンに付き添うことが出来た。
「おなかを刃物で切って、針でぬったりして...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 22.海辺にて 前編
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21. 自覚
レンは悪夢を見ていた。
真っ黒などろどろとした渦の中に、体がずぶずぶと埋まっていく。
必死に逃げようともがくけれども、どんどん体が沈み、ついにとぷんと頭が埋まってしまう。こぽり、と息の泡が吐き出され、鼻と口に臭い泥が流れ込んできた。
「助けて……」
腕はどろりとした泥に囚われ、...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 21. 自覚
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20.緑の女
「けが人がいると聞いて、リンさまは迷わずに路地に飛び込んでいらした」
「私達に、すぐに助けを求めていらした」
「自分の医者をすぐに貸した」
「一介の薬師だってすぐに受け入れた」
賞賛の声が高まるなか、リンは助けてくれた人々に感謝を述べる。まるで、青の国の王になったようだとリンは思った...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 20.緑の女
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19.願い
ガクが立て続けにリンに指示を出した。リンはうなずくと、宿ではなく街に向って走った。路地の入り口には、突然の不穏な騒ぎになにごとかと人が集まっていた。しかも青の国の王室の使い馬車が路地に堂々と停まっているのである。
リンは路地から飛び出した。
突然の正装の若い娘の姿に、人々は驚く。ど...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 19.願い
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18. 再会
灼熱の昼間が過ぎ、滝のような夕立が過ぎ、やがて夜がやってきた。
雨の去ったころに青の国の使いの馬車がやってきて、リン王女とメイコ、そしてガクを今夜の晩餐会の会場へと誘って行った。
ひとり残されたレンは、着替えて宿の外へ出た。リン王女には、食事は宿で摂るように言われていたのだが、と...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 18.再会
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